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【No.13】日本における職業的会計士による外部監査の普及・拡大 

NIT MOT Letter

No.13 / 近江 正幸(専任教授)

 

 日本における職業的会計士による外部監査の普及・拡大                   

 

 欧米では古くから自身の誠実性あるいは潔白を外部の第三者に証明してもらうことは当然の慣行という文化があった。しかしながら、日本では他人(第三者)に疑われることを恥とし、また自分たちの活動を他人に見られることを嫌悪する傾向があり、第二次世界大戦以前は外部監査という慣行は一般に根付かなかった。

 日本に公認会計士という会計および監査の専門家の資格が誕生したのは戦後すぐの昭和23年(1948年)であり、特定の大規模会社の財務諸表の監査が法律(証券取引法)に基づく制度として強制されたのは昭和26年(1951年)のことであった。職業的専門家による外部監査を日本に根付かせるためのこれらの改革は、戦後、日本を占領した連合国軍総司令部(GHQ)による日本の経済を民主化するための政策の一環であった。

 

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 このような強大なパワーをもってしても、監査の慣行そのものが無かった日本で、企業が作成した財務諸表の適否を検証し、保証する財務諸表監査を定着させるのは大変な作業であったと想像される。

 筆者が監査論の研究を始めた40年前は、研究者の数も少なく、文献も限られており、欧米の本が頼りであったことを覚えている。強制監査を取り入れた証券取引法(現在の金融商品取引法)は、投資家の保護を目標とし、その中心に財務諸表等による適切な企業内容の開示および公認会計士による財務諸表の監査を置いていた。

 日本で企業が開示する財務諸表に対し、職業的会計士の監査が必要になった理由については、下記のように説明されていた。

 戦後の財閥解体、証券市場の再整備といった混乱期を経て、日本でも昭和20年代中盤には大規模な会社が日本経済のエンジンとして復興経済を支えた。経済の民主化にともない、投資の主役は財閥から一般株主、機関投資家に変化していた。大規模な企業が多くなると、大企業を取り巻く利害関係者は投資家を中心に幾何級数的に増大し不特定多数化した。

 投資家を中心とした不特定多数の利害関係者は自分たちの利害に関係のある情報の開示を企業に求めるようになる。これに適切に応えない限り、多くの利害関係者との取引関係は成長・発展しない。関係者に提供する情報についてそれぞれに個別対応することは物理的に不可能なので、会社は自分たちの現在の状況を示すことのできる財務諸表等を作成・開示することになった。

 しかしながら、財務諸表は事実だけでなく会計慣行と判断の総合的な産物であるため歪められやすく、独立の第三者の検証により、その信頼性を保証してもらわない限り、利害関係者からの信頼を得ることができない。このため会計および監査の専門家である職業的会計士による外部監査が必要になった。

 

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 このように誕生した公認会計士による監査は、昭和41年(1966年)の監査法人制度の導入により、財務諸表監査の監査主体は公認会計士という個人から監査法人という法人に変化していった。

 その後、日本社会に定着した財務諸表監査制度は、監査対象を株式会社から他の法人形態に拡大していった。

 学校法人、労働組合、そして信用金庫、信用組合、労働金庫、生活協同組合に対する財務諸表監査はすでに歴史を重ねている。

 

 それに加え大規模な社会福祉法人、医療法人に対する公認会計士または監査法人による財務諸表監査が昨年より導入された。

 また2019年度から農業協同組合系統内の監査組織である「JA全国監査機構」が監査法人に組織替えし、農業協同組合等の財務諸表の監査を行う。

 筆者が監査委員長としてトップを務めている漁業協同組合系統内の監査組織である「JF監査機構」についても、近い将来、監査法人化が予想されている。

 このように公的な使命を社会から与えられ、また国家財政による支援や優遇措置により保護されている組織については、財務情報の開示と外部専門家による監査が社会から求められ、法律により強制される時代になった。

 今後ともこの動きは止まることなく、社会の安定と信頼を生み出すインフラとして機能するであろう。

 

近江 正幸(専任教授)

 

 次号(No.14)は 萬代教授が執筆予定です。

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