MOT 働きながら技術経営が学べる1年制大学院 日本工大MOT

【No.16】横串のプログラムマネジメントの必要性

NIT MOT Letter

No.16 / 武富 為嗣(専任教授)

 

横串のプログラムマネジメントの必要性

 

 最近、全く異なる業界の様々なところで横串のプログラムマネジメントの必要性について聞くようになり、経営手法として時代が追い付いてきたのかなと感じています。横串のプログラムマネジメントとは、従来の組織が営業・マーケティング、生産、購買、研究開発、システム、財務会計などと機能別の構成になっていたものを顧客や市場から見たり、解決すべきテーマから見たりして、機能組織横断的なプログラム組織として、横から串刺しにして一気通貫で運営しようとするものです。

JAL再生に京セラの稲盛会長と政府系ファンドが入ったのは有名な話です。偶然にも私の友人の一人は、ファンドの責任者として、もう一人は、京セラからJALの経営幹部としてJAL再生に参加していました。二人とも口を同じくして、組織横断の横串のマネジメントの重要性に言及しておりました。稲盛会長の再生フィロソフィーの元、アメーバー経営による厳密な原価管理、それに横串のプログラムマネジメントで再生を果たしたといっておりました。

最近、私が長年 コンサルティングを行ってきたある製造業において、新任の執行役員に就任した人のお祝いをしました。彼と最初に出会ったのは、まだ彼が30代の頃でした。中途入社で、その会社に入って来て、我々のコンサルティング案件に参加していた優秀な人ですが、何が合わなかったのか同業他社に転職してしまいました。それから、数年後に舞い戻ってきて、再会しました。今は、M&Aの責任者として、自分で買収対象企業を評価して、交渉に臨み、契約成約後は責任者として、買収した北米の会社に乗り込んで経営しています。一昔前の終身雇用が前提の時代には、中途採用、途中退社、再入社で執行役員というのは、考えられなかったようなキャリアパスですが、会社がプロとして認めているということで、経営環境や求められる資質が様変わりしているのが見て取れます。もともと技術者ですが、M&Aプログラムの責任者として投資会社や相手先と財務や法務の交渉を行い、技術の評価も行い、話を纏めています。この様に企業を買収するという観点から、全てをまとめあげるのは、大手企業といえども、人材が限定されることは容易に想像できます。彼には、リスク管理の視点から自分で判断できない部分には、高い金を払ってでもよいから、プロの助言を得るように言いましたら、早速と取り入れたいといってきました。

 

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 また、最近の新商品開発やビジネスモデルの創出には、ITが絡んできます。ここでも、横串のプログラムマネジメントの重要性が問われています。新商品開発には、商品や市場の動きを知る必要がありますが、同時に、商品の売買に関する受発注処理などの業務をシステム上で動かす業務知識、ITの知識が求められております。これをうまくマネジメントできないために、色々なトラブルが発生しており、何とかしてくれないかとの相談をある外資系企業の役員から受けました。そこの会社では、新商品開発全体を責任もってマネジメントしている人がいないために、部門間の申し送りが良く出来ていないので、運用上、問題が発生しているとのことでした。一昔前であれば、問題が起きれば、その場で担当者同士が、話し合って解決したものですが、今では、自動的にシステムで運営されるようになっており、システム設計も商品設計に組み込む必要が出て来ています。顧客や担当者は、システム上や携帯端末上の画面を見ながら、取引したり入出力したりするようになっています。ところが、最初の設計の段階で、全体を責任もって管理できる人がいないために、部門間の申し送りがシステムにうまく組み込まれておらず、トラブルを引き起こしているとのことでした。単に起きたトラブルごとに対応するのではなく、横串の組織体制にして、商品開発全体を責任もってマネジメントする仕組みにしてやる必要がありますよと、言ったら、その仕組みについては理解してもらいましたが、そのような人材がいないので、どうしたらよいかという返事でした。内部統制やリスク管理の観点からも仕組みつくりが急がれますが、求められるのは、幅広い知識と経験に加えて、全体を取りまとめるリーダーシップの能力ある人材です。横串のプログラムマネジメントに初めて取り組むところでは、最初はどの会社でもそのような人材がいないので、どうやって育てるかが、カギとなります。逆にそういう人が揃うと競争力が強化されることになります。

 ある大手製造業の研究開発部門からも似たような問い合わせを受けました。すべて自前主義を捨て、オープンイノベーションを推進したいが、外部をどう取り込むようにしたらよいかというものです。市場が求めるものを技術開発にどう生かすか、外部技術を開発に繋げてやるにはどういう体制にすれば良いかというものでした。ここでも、横串で、市場から技術開発まで全体をまとめあげる責任者が必要になってきています。最近ブームのIoTでも、全く同じ問題が発生しており、市場から見た製品化、運営のデジタル化、システム化と一貫した管理を求められております。

 

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 私が学校を卒業して入ったエンジニアリング会社では、マトリクス組織といって、機能組織横断の横串のプロジェクト組織でプラント建設を推進するというのを新入社員研修で真っ先に習いました。当時、最先端のマネジメント手法として、プラント建設では、化学、機械、電気、計装、土木、建築などのエンジニアを束ねる必要があると言われたものです。理工学系は、大学から知識体系が縦割りになっており、会社の中でもその知識体系に沿って、専門部が出来ていました。それを横串で束ねないとプラントが建設できないというので、取りまとめるプロジェクトマネジャーになるのは、皆の目標でした。これが、今では、新しいマネジメント手法として、M&A、企業再生、新商品開発、グローバル研究開発、オープンイノベーション、デジタル市場創出など、昔はあまり聞き慣れなかったビジネスの場面で求められるようになっています。時代の要請から、成長著しいビジネスの分野では、財務会計、マーケティング、開発、生産、購買、システムといった経営の知識を総動員して横串でマネジメントする人材が求められています。

 

 

武富 為嗣(専任教授)

 

 

次号(No.17)は 西尾 好司 教授 が執筆予定です。

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