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【No.32】明治維新と起業家精神

NIT MOT Letter

No.32 / 平川 淳(専任教授)

 

 2018年は明治維新150周年ということで各地で、記念のイベントがたくさん催されました。NHKの大河ドラマでは明治維新の立役者西郷隆盛を主人公にした「西郷どん」が放送され出身地の鹿児島は多くの観光客でにぎわったようです。薩摩藩に並ぶ一方の立役者長州の萩でも盛んにイベントが開催されていました。

 一方、戊辰戦争で賊軍とされ、大変な犠牲を強いられた、会津では「明治維新150年」とは言わず、「戊辰150年」ということで、白虎隊をはじめとする、多くの悲劇をわすれないためのイベントが開催されていました。私は、会津に仕事で毎月行っていますのでつい会津藩の悲劇に同情的になってしまいます。

 日本の近代化のきっかけとなった、明治維新においても、勝者と敗者によってずいぶん受け取り方が違うものだと実感しました。

 明治維新は、日本の歴史においても例のない、劇的な変革でした。今までの価値観が180度変わり近代日本の幕開けでした。政治的には、260年続いた徳川幕府の武士の統治から、中央集権国家としての近代国家への大きな転換でした。私は、起業家育成を生業としていますので、明治維新を経済的な視点、特に起業家に注目してみると、その後の日本の発展の礎を築く多くの偉大な起業家を輩出した時代でもあります。三菱財閥の岩崎弥太郎、安田財閥の安田善次郎、大倉財閥の大倉喜八郎、浅野財閥の浅野総一郎、鉄道王松本重太郎、電力王福沢桃介、渋沢栄一などなど、綺羅星のごとく骨太の起業家が数多くでて、明治の経済発展を支えただけでなく、その後100年以上にわたって日本経済の発展を支える企業を数多く創出しているのです。

 明治時代はなぜこれほどの多くの偉大な起業家が生まれたのか?いろんなことをいう学者はいますが、私は起業家・経営者の一人として感じるのは、司馬遼太郎が「坂の上の雲」で「明治人は恐ろしく楽天的であった」と書いているように明治という時代背景的なものもありますが、現在にも通じる起業家に共通するの3つの要素を兼ね揃えていたからだともいます。

1.    強い確固たる理念:維新後、欧米列強に負けない国になるには、経済を発展させる必要がありました。明治の起業家は「一身独立して国独立す」という国家感のある気概のある起業家でした。自分たちで新しい日本を作るという高い志と楽天主義。起業をして国家のために貢献するという高い理念がありました。起業は志がスタートです。このことは、現在でも成功している起業家にも共通していることです。

2.    エコシステム(人脈):起業は一人でできても、成功するためには、多くの人の支援が必要です。成功する起業家は必ず、人脈つくりの天才でもあります。起業し成功するためには、どんなに優れな人でも自分1人ですべてのことをやることはできません。自分でできないことは人の手助けが必要です。いかに多くの頼りになる人を組織化しているか、それが成功する要因です。また起業した後かならず苦しい時がきます。そのとき頼りになるのが人脈です。

3.    単騎出陣:起業家は志があれば一人で立ち上がり、どんな困難があろうとも一人になってもやりぬくという心構えが必用です。複数集まって起業すれば必ず失敗します。責任は分担され、成功すれば利益配分でもめ、調子が悪くなると責任転嫁でもめます。一人で立ちあげれば、全責任は自分にあり、権限も1人にあります。大変ですが、一人で立ち上げると勇気が必要です。

 現在は、起業には最も適した時代だと思います。変化はチャンスです。価値観、IT技術、AIの進展、物流、グローバル化など変化の激しい時代だからこそ多くの起業のチャンスがあります。加えて日本ほど起業の支援制度が充実している国はありせん。志があり、一人でもやってみようと思う若い人には恐れずにぜひ起業をしてもらいたいと思います。

 

平川 淳(専任教授)

 

次号(No.33)は 小田 恭市教授 が執筆予定です。

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