2015年9月の国連持続可能な開発サミットにて“持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)”が193の国連加盟国の全会一致で採択され、その中に2030年を目標年とする持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が明記された。
DGsは、17の目標(Goal)、169のターゲット(Target)、232の指標(Indicator)から構成され、国際社会が取り組むべきあらゆる課題が網羅されている。
持続可能な開発とは、1987年の国連ブルントラント委員会報告(Our Common Future:我ら共有の未来)にて定義された概念で、「将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、
現世代のニーズを充足する開発」を指す。つまり、世代を超えた開発の理念であり、地球の持続と人類の繁栄の両立を目指すことが求められている。
日本政府はSDGsへの取り組みを具体化するため、2016年5月に安倍総理を本部長とするSDGs推進本部を設置し、同年12月にはビジョンと8つの優先課題等を示す実施指針ならびに具体的施策を閣議決定している。その後、2017年12月には現在の各種政策とSDGsの取り組みを整合させる形で“SDGsアクションプラン2018”を作成している。こうした政府の動きと歩調を合わせるように民間セクター、地方自治体、大学などの国内の様々なアクターのSDGsに対する動きも活発化している。
政府は、2017年12月より、SDGsの優れた取り組みに対しジャパンSDGsアワードの表彰を行っているが、その第一回、第二回の受賞者の顔ぶれをみると、地方自治体、民間企業、公益法人、共同組合、NPO/NGO、教育機関(大学、高校、中学、小学校)と実に幅広い範囲となっており、SDGsの活動が多様な主体に拡大していることが伺える。民間企業の受賞の中には、各社のコア技術をSDGsの達成のために駆使した様々な新しいビジネスモデルがあり興味深いものが多い。外務省のホームページ内にある“Japan SDGs Action Platform”には、それぞれの受賞理由が紹介されており、また受賞企業・団体などのホームページにはSDGsに対するビジョンやその背景にある思いなどがつづられている場合が多い。SDGsの現在の国内の動きの理解のため、是非そういった情報へのアクセスをお勧めしたい。
日本国内では、2000年代に入り多くの企業がCSR(企業の社会的責任)のための活動を企業活動の一部に取り込むようになった。また、2011年にはマイケル・ポータ―教授等がCSV(共通価値の創造)という概念を提示し、企業の本業での社会価値創造の重要性を提唱した。企業は社会に必要な存在であり、企業の技術や活動は社会的課題の解決に不可欠のものである。SDGsは、これから先人類が取り組まなければならない社会的課題を国際社会の共通目標として定めたものである。社会的ニーズが存在するということは、様々な形でのビジネス機会が存在することを意味するものであり、SDGsにおいて企業が最も大きな役割を担う主体者であることは疑いの余地はない。技術からどのような価値を生み出すかは、技術経営に求められる本質的問いであり、今後SDGsの達成に向けて何ができるか、その視点から技術経営を考えることが必要となっている。これからSDGsをと考える場合には、まずは一度SDGsの17の目標と169のターゲットをじっくりと読み、自社あるいは自身に何ができそうか、どのようなことをやってみたいか、といったことを考えてみることからスタートすると良いのではないかと思う。
次号(No.41)は 髙篠 昭夫教授 が執筆予定です。