#President
日本工業大学は1967年に設立され「実工学」の理念の下、確かな専門力を有する実践的技術創造人材を育成し、技術系中堅企業への人材供給を中心に、我が国産業の発展に貢献して参りました。本MOTは、これら企業の経営者、後継者、幹部社員などが技術経営人材として活躍することが我が国の地域経済活性化に不可欠であるとの考えに立ち、「技術系中堅・中小企業における問題発見・解決能力を有する高度職業人」を育成することを目的として2005年に設立されました。それ以降、中堅・中小企業における優秀な人材を育成し、その使命を果たしてきています。さらに、2018年には第三の柱として「経営支援」を掲げ中小企業診断コースを開設し、中小企業へのコンサルティングを目指す方々へと対象を広げてきました。
コロナ禍により、在宅勤務やWeb会議等の普及にともない、ITに関わる情報の入手・保存・伝達および、IoTシステムによる各種機器のリモート監視や連携させる技術が急速な発展を遂げました。さらに革新的な技術として生成AIが登場しました。米マッキンゼーが公開した調査結果によれば、ホワイトカラーの中でも比較的、単純な反復動作やオフィス支援業務については雇用が減少するものの、STEM(科学、技術、工学、数学関連)や医療などの専門職種では生成AIで生産性が高まり、仕事量は増えると示されています。企業経営は激動の時代を迎えており、過去の成功体験とは異なる新しいビジネスモデルを構築する必要に迫られています。人手不足に悩まされてきた中堅・中小企業にとって、生成AIによるオフィス支援やカスタマーサービスは情報のグローバル化に対応できる体制が整ったと解釈するべきでしょう。
技術経営を進める上で生成AIによる文章作成機能は大いに役立つはずです。専門家顔負けのプレゼンテーション資料を作ることができます。しかしAIの答えにある情報は世界で共有されており、新規性はないはずです。必要なのはAIの学習対象外にある言語化されていない情報、それらを互いに交換できる場が重要になるはずです。本MOTでは卒業した修了生、現役の院生と教員が情報交換できる「MOT倶楽部」が活動しています。異なる分野の言語化されていない暗黙知の情報を交換する「IT時代の井戸端会議」の重要性は増大するでしょう。本MOTは異業種・異職種の方々と考え方や発想を相互に刺激しあえる環境が整っていることが大きな魅力です。そして、中堅・中小企業の教育・支援・研究の総合拠点として発展していくことを願っております。
日本工業大学
学長 竹内貞雄
#Dean of the Graduate School
本技術経営研究科は、技術系中堅・中小企業の経営者・後継者・幹部などを対象に、技術経営人材の育成を目指して2005年度に開校されました。当面、修了生1,000人の輩出の早期実現化を目標にしていますが、既に、その半数を実現することが出来ました。また、2018年度からは中小企業診断コースが新設され、中小企業を支援できる人材育成にも取り組み始めました。
本研究科を支えてくださいました皆さま方には厚く御礼を申し上げます。今後とも、本大学の「実工学」、モノづくりに関わる教育・研究実績の持ち味を活かしつつ、我が国の技術系中堅・中小企業の発展に貢献できる専門職大学院として存在感を高めていきます。
最近では新型コロナウイルス感染症が、生活・産業・経済などの活動に大きな脅威となりました。感染を防ぐために人と人の接触が制限され、オンラインでの在宅勤務が拡大しています。本研究科でも、従来の対面での授業からオンラインでの授業に移行するなど対応を行っています。ただこれを契機に、授業や研究におけるIT・デジタル技術の活用は相当に進み、まさに脅威は機会であることや技術を活かす事の重要性を実感しました。これらIT・デジタルによるDX(Digital Transformation)に加えて、SDGs/ESGの進展とGX(Green Transformation)など大きな環境変化の動きは続いています。技術を活かした経営を構想し実践することが出来る技術経営人材は、これら世の中の変遷とともにますます重要度が高まっていくと考えられます。
中堅・中小企業は製品・市場領域の狭さや人モノ金の経営資源が限られるなどの制約はあります。ただ同時に、意思決定の速さや従業員個々への目配りが可能で小さな機会を大切に獲得出来る特徴もあります。新たにエコシステムが形成されオープンイノベーションなど外部活用が容易になった現在では、その特徴が強く活かせる時代になったと言えます。この制約を特徴で打破していく姿勢を私個人はSME(Small Medium Enterprise)スピリッツと呼んでいます。本研究科ではこのような中堅・中小企業からの学びも大切にしています。
日本工業大学
大学院技術経営研究科
研究科長 清水弘
また、本研究科の新しい取り組みとして「複合授業」を実施しています。院生は自宅等からのオンライン受講とキャンパスで教員や他の院生と対面受講という、異なる受講形態のニーズがあります。「複合授業」はこの両方を満足させる授業形態です。これによって地方の中堅・中小企業における技術経営人材の育成ニーズにも対応することが可能となりました。
加えて、本研究科の特徴の一つとして、修了生・院生と教員が相互に啓発し研鑽する場としてMOT倶楽部の活動が行われております。これは今後も継続していきます。さらに、中堅・中小企業のビジネス支援やそれを通じて研究を深めていくこと、修了生の中小企業診断士の参画を図ることでの修了生間の連携の強化などを行なうために、「中小企業イノベーションセンター」を設立しました。
これらの活動は、本研究科が目指す「中堅・中小企業の教育・支援・研究の総合的拠点」の実現のための重要なツールの一つになるものと期待されます。
本研究科は、首都圏のみならず地方の技術経営人材の育成により、我が国の技術系中堅・中小企業の活性化、さらには技術経営を学ぶ多様な企業の人材育成への貢献の一翼を担い、一層の社会的貢献を進めていきます。