NIT MOT Letter #69

自信のないことに主体的に取り組む

  • 浪江 一公
  • 2022年03月25日

今、日本企業において、自然性社員の割合を高めることが極めて重要です。それでは、自然性社員と他燃性社員との差はなにか。私は、自分が自信のないことに主体的に取り組むかどうかにあると思います。

 随分前の日経新聞の記事(2019年2月21日)に、「熱意あふれる社員の割合は、米国が32%に対し、日本はわずか6%にすぎない」とありました。また熱意あふれる社員の日本の割合は、世界全体でも最低レベルとのことです。この新聞記事の中にあった数字と、京セラの創業者である稲盛さんが主張する、社員の区分の自然性、他然性、不燃性の概念を組み合わせてみると、日本においては、自然性社員:6%、他然性社員:70%、不燃性社員:24%ということになります。


 今、日本企業において、自然性社員の割合を高めることが極めて重要です。それでは、自然性社員と他燃性社員との差はなにか。私は、自分が自信のないことに主体的に取り組むかどうかにあると思います。何か新しいことに取り組む場合、100%自信を持っている人はいません。しかし、自然性社員は、それでもそれに主体的に取り組みます。一方、他燃性社員は会社から言われて初めて取り組みます。不燃性社員は、そもそも取り組まないかもしれません。

 他燃性社員の場合、どう自分自身の能力を高めていくのでしょうか。多くの場合、本人は自信がなくても会社から指示をされ、取り組まざるを得ない状況になり、そのような環境下で何とか工夫を重ね、最後にはそれを実現できるようになる。その繰り返しで自分の能力が高まり、学校を出てほやほやの右も左もわからない平社員が、やがて能力を得て管理職に昇進し、更に一部の社員は役員に昇進するという過程をたどるわけです。

 そうであれば、他燃性社員でも自分から主体的に自信のないことに取り組むことで、自分の能力を高める機会をより多く持ち、より高い能力を獲得するということができるはずです。

 ここでのポイントは、仮に自信がなくても実際に取り組めば、求められるレベルの100%に満たなくても、うまくいかない場合でも通常であれば50%や60%の能力の向上を実現することができるということです。最悪でも0%ということはありません。また仮に今回の能力の向上は目標の100%に満たなくても、次回、同じような取り組みにおいては、更に100%に近づけることが間違いなく可能です。

 もちろんアウトプットとして目標レベルに達することができなかったことによる、社内での評価の低下などダメージはあるわけですが、その点は小さく始めるなどの、それなりのダメージコントロールを組み込むことは必要です。ただし、それでも社内で低い評価しか得られないことが仮に続いたとしても、今の時代転職というオプションがあり、社内での評価はどうあれ、すでに以前より間違いなく能力を向上させている訳ですから、新天地で再起を図り、成功するということは十分ありえます。

 私は人間の優れた能力の一つが、自分自身の経験から継続的に学ぶことができることであると考えています。自分自身で学ぶ機会を主体的に数多く持つことで、間違いなく自分の能力をより高いレベルに高めることができるのです。つまり、長期で考えれば、自信のないことに主体的に取り組むことは良いことだらけなのです。

 それでは自信のないことに取り組むモチベーションは、どこから生まれるのか。その答えは、皆さん自身に考えていただきたいと思います。間違いなくその方法があるはずです。

 

 最後になりましたが、今月を持ちまして定年により私は専任教授を退任することになりました。日工大のMOTでは、皆さんには17年間の長きにわたりお世話になりました。今後の皆さん、そして日工大のMOTの更なる発展をお祈りしております。

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