NIT MOT Letter #12

プロフェッショナルとは・・・~12期生送別のLetter~

  • 佐々木 勉
  • 2017年03月31日

いずれの世界も同じで、年度末近くとなると期限の迫った仕事が山積みとなります。

と言うわけで、遅延のよくある言い訳から始めてしまいましたが、私のLetter 掲載が遅れに遅れ、申し訳ありません。また、掲載予定が年初の頃でしたので、当初は、企業の社会的責任についての考え方が大きく変容していることを話そうと考えていたのですが、既に3月の末となりましたので、この3月に卒業しました12期生の話から始めたいと思います。

学位記授与式の日に、12期生では、修了生一人一人に「あなたにとってのプロフェッショナル」についてたずねていました。その中に、「ずっと素人です。」という回答と「70から80%の力で仕事をすることです。」という回答がありました。記憶に頼っていますので表現は正確ではありませんが、話していたことはこのような事でした。後者の発言に、隣にいた先生は「いや、120%だろう。」と反論されていました。

これらの回答を聞いて、私としては、隣の先生の反論も含め、どの回答にも共感しました。反論も含めてということですから、それぞれ個々に共感したと思われるかもしれませんが、そうではありません。同じことを別の表現で話されていると思い、共感したのです。この解釈にも反論のあることは予想されますし、当のご本人から全く意図が違うと指摘されかねませんが、Letterの気楽さに免じて、私の解釈を述べさせていただきます。

最初の「ずっと素人」ということは、プロといえる段階に自らがたどり着くことはないということを言いたかったのだと思います。充足を感じないが故のチャレンジ精神旺盛な方の回答ですから、多分間違いはないでしょう。事実、学べば学ぶほど、研究すれば研究するほど、完璧は遠ざかります。「70から80%の力」というのも、事前に「70から80%の力」で抑えておこうと考えられたのではなく、結果として、もっとできたのではないかと思い、「70から80%の力」しか出せないものだということで話されたのではないでしょうか。大きな経営実績を上げられているのですが、いつも控えめな表現をされている方でしたので、これも妥当な解釈だと思っています。では、「120%」とは。もうお分かりだと思いますが、120%の力を出すということはできません。100%が限界です。しかし、プロというからには、常に120%出す気概を持ってことに当たらなくてはならない。ただ、出せるのは100%が限界。ということはまだプロのプロになるには20%足りないということです。完璧はその先にあるということです。論理的に突き詰められる先生の発言ですから、これも間違いのない解釈だと考えています。

3人の回答の解釈をまとめますと、これで十分だと考えずに、常に高みを目指すのがプロだということです。だから、これが頂点だと思っていても、その先にもっと高いところが聳え立っているのです。「常に高みを目指し、探求に終わりがないことを自覚している」ことを、3人の方々が日頃考えている各々の尺度をもって表現されたため、異なった表現になったといえましょう。もちろん、このことは必要条件であって、十分条件を満たしているわけではありません。十分条件についてはまたの機会でということにさせていただきます。

Letterということで、最近の出来事から気になったこと、あるいは少し考える切掛けになったことを取り上げさせてもらいました。が、これが経営を学ぶこととどのように繋がるかについて、最後に話しておかないとしまりがなさそうです。

「変化への対応」、これは経営にとっては常に求められる姿勢ですが、今日のように第四次産業革命の時代であるとか、超スマート社会(Society 5.0)実現に向けてとか言われてしまいますと、「変化」に「対応」しなくてはと、あれこれ本を読み漁ったり講演を聴きに行ったりするものです。そして納得してしまう説明をたくさん持ち帰るのですが、いざそれを活用しようとすると、選択に窮してしまうのです。それぞれの説明を読んだり聴いたりしたときは納得していたのです。が、ばらばらに理解していて、自らが携わっている事業についてはどのように「変化」を理解すべきなのか、どのように「対応」すべきなのかが判らなくなってしまうのです。経営関連に限らないのですが、オリジナリティを強調するため、著者や演者は、往々にして、ほぼ同じ内容を異なったキーワードを用いて表現するものです。これも著者や演者にとってはマーケティングといえばマーケティングなのですが、それに惑わされても仕方がありません。

上でプロフェッショナルに係る回答について、それぞれの方の思いである「常に高みを目指し、探求に終わりがないことを自覚している」ことを、各々の方が日頃考えている尺度をもって表現されたため、異なった表現になったのだと述べました。実際、プロフェッショナルとか匠と言われている方々の話を聞くと、ほとんどの方々が「これで極めたということはない」という言い方をされます。この「極めることはない」ということを基礎に、3人の方々の表現を見渡してみて、同じ内容として共感している自分を私は省みたのです。経営を学ぶ際にも、このLetterを読まれている方固有の見渡し方を獲得してもらうとともに、常にブラッシュアップしていただきたいということです。

最後にと言いながらまだ続きますが、「あなたにとってのプロフェッショナル」については全員から回答を得ており、映像にも残されていました。締め切り遅延の重圧の中、Letterの題材になるなあと思いながら視聴していましたので、かなり聞き漏らしてしまいました。機会があれば、もう一度全員の回答を聴いてみて、「私にとってのプロフェッショナル」について考えを深めてみたいと思っています。

本当の最後に、教員にも懇切丁寧にOA機器の使い方をご指導して下さっただけでなく、操作メモまで残してくれました12期生の皆さんのこれからの活躍を祈念して、Letterを終わりにさせていただきます。

次号(No.13)は 近江教授が執筆予定です。

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