プロジェクトチームは、各専門領域の異質のエキスパートが集まり、少数精鋭で構成されることが一般的です。その為、メンバーは自分の専門とする分野を中心に、前後左右にリーチングアウトをし、広範囲な仕事を手掛けざるを得ません。
プロジェクトチームは、各専門領域の異質のエキスパートが集まり、少数精鋭で構成されることが一般的です。その為、メンバーは自分の専門とする分野を中心に、前後左右にリーチングアウトをし、広範囲な仕事を手掛けざるを得ません。プロジェクトメンバーになったからには自身の専門領域に加え、自発的に関連領域までの仕事に手を出し、守備範囲を広げて行きながら、自分の得意領域の拡大に努めることが必要です。
私自身の40年間の企業活動で約30年間は事業上のプロジェクト、開発のプロジェクトの仕事に関わってきました。これまでの自分の経験からも、プロジェクトを経験した人が企業人として大きく成長した事例を数多くみてきました。プロジェクトの経験が個人の能力伸長に大きな効果をもたらすことは間違いないようです。
プロジェクトで仕事をし、経験を積むことが個人にとって大きなメリットがあり、如何に個人の能力の伸長につながるのかについて触れてみたいと思います。能力を伸ばすコミュニケーション(人と人との接触のパターン)を考えると、接触パターンにはそれぞれ特徴があり、整理すると下図のようになります。異経験・異専門性の接触(図中Aパターン)ではほとんど話は通じないでしょう。また同経験・同専門性の接触(図中Dパターン)では話は通じるがアイデアの発見や交換はなく、なれ合いの接触に陥ると言われます。同じ専門性であっても、経験が異なる接触(図中Bパターン)では、先輩・後輩の関係のように技術の伝承のような良い接触が生まれます。同一経験で異質のメンバーが集まる接触(図中Cパターン)では、プロジェクトにおける接触パターンもこれに該当しますが、分野が異なるとこれまでになかった違ったアイデアが生まれたり、他領域の仕組みや技術が転用されたりすることが度々起こります。
専門性や経験が同じであったり異なっていたりしても、様々な接触の仕方によって能力を伸ばしていくことができるものです。そのような中でも、個人の能力を伸ばす最も良い組み合わせは“Bパターン接触”と“Cパターン接触”の繰り返しと言われています。これまでの職場とその専門性に加えて、プロジェクトチームに移り、異質の人との新たな接触によって新しい知識と経験を積み、刺激を受けて元の職場に戻るような接触の仕方がプロジェクトメンバーの能力を効果的に伸ばしてくれます。
企業では商品開発、事業展開、経営革新等々の様々なものが試みられていますが、その推進に当たっては「組織横断型プロジェクト」がしばしば適用されます。それは“徹底した能力主義のプロトタイプ”と言えるものであり、目的達成と個人の能力伸長に対して、極めて有効なプロジェクトとしての仕組みです。プロジェクトメンバーの話や誘いがあったらそのチャンスを逃さず、迷うことなくプロジェクトに参画し、専門性の異なる人と積極的に交流、接触をしながら様々なことを吸収することで、自身の成長につなげて行って欲しいものです。
次号(No.19)は 水澤 直哉 教授 が執筆予定です。