NIT MOT Letter #86

生成AIが変える、2024年的SEO

  • 弓削 徹
  • 2024年06月25日

年々、賢くなるGoogleの検索エンジン。これに挑戦するように出てきたのが生成AIです。果たして検索エンジンは、生成AIが大量生産する記事に価値を見出すのか? はたまた生成AIはSEOを効率化するツールたりえるのか? 2024年的SEO対策を考察してみました。

毎週のように新しい技術がリリースされる生成AI分野──。

嚆矢というべきChatGPTのインパクトにはじまり、Copilot、Gemini、Claude…、そしてそれぞれを実装したさまざまなサービスがインターネット上を往来しています。
これをどのように活用するか、危険はないのか、などは別の場所で語るとして、ここでは生成AIの影響を受けて変わりゆくSEO対策について考えてみたいと思います。

通常、Google検索エンジンのアルゴリズムは年に2、3回の変更(コアアップデート)が行われ、2年に1回の大きめの変更が行われます。ところが2023年は1年間に9回もの変更が実施されました。その理由は、生成AIへの対応です。
生成AIで作成されるコンテンツをどう評価し、どう扱うか。ここに、さすがのGoogleも少し悩んだようです。では、結果としてどうなったのか。その前に、近年のSEOの傾向を見ておきましょう。

かつてはキーワードの出現率と被リンク、内部対策などが大きく問われていました。そのため、白地にキーワードを白文字で羅列し、人には見えないけれどクローラーは認識するという裏ワザや、量産された無価値なサイトからの被リンクを購入するなど、小手先の対策が横行していたものです。

やがて検索エンジンも賢くなり、コンテンツの内容やUX(ユーザー・エクスペリエンス)を重視するようになると、キーワード出現率は適度でなければならず(3%ていど?)、 被リンクはランクの高いサイトや関連性のあるサイトからのものでなければ評価されなくなりました。
同時に、真にユーザーオリエンテッドであるために、表示スピードが速いこと、更新頻度が高いこと、十分なページ数と文字数があることが求められるように変化していきます。

つまり、検索エンジン「対策」をハックするというよりも、訪問者が「本当に役立つサイトだ」と認識するようなコンテンツを掲載するということに尽きるのです。
さらに、記述上ではワードプレスを使用していること、モバイルフレンドリー(レスポンシブ)であること、セキュリティ対応(https)が済んでいることが必須となっていきます。

検索エンジンは人の喜ぶ記事を求める

次に、コロナ期間とその前から重視されるようになったのが、YMYLとE-E-A-Tでした。YMYLとは、Your Money Your Lifeのイニシャルで、「あなたのおカネ、あなたの生命」の意味です。
つまり、資産運用や投資、そして健康や疾病に関するウェブサイトは厳しく評価される、そのため上位表示はなかなか困難である、ということになったのです。
これは、ある健康関連のサイトにオカルト的な情報が掲載されていた事例や、コロナ中の誤情報拡散などを重く見たための対策でした。

一方、E-E-A-Tは、「E=経験(エクスペリエンス)、E=専門性(エクスパティーズ)、A=権威性(オーソリテイティブネス)、T=信頼性(トラストワースィーネス)」であり、SNS時代に対応したものです。
平たくいうと、書籍の著者や医師など権威のある専門家が執筆、寄稿するなど、信頼性が担保されたコンテンツを評価します、ということです。



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そして、生成AIの鮮烈な登場で状況はどうなったか──。
直近の2024年度のコアアップデートも経て、独自性のない大量生産記事は評価しない、となりました。生成AIは、プロンプトにキーワードを含む文章を入力するだけで、なんとなく長文(指定の文字数で)のコンテンツを排出してくれます。それをコンテンツとして掲載してもSEO対策にはならないということです。

クラウドソーシングなどで生身のライターに発注した大量生産の記事も同じでしょう。問題は「オリジナリティのない記事は評価しない」ということにつきます。
生成AIは、どこからか拾ってきた既知の情報をそれなりの文章にしてくれますが、その効果は極めて限定的といわざるをえません。(そのウェブサイトの趣旨や運営主体と無関係な内容のコンテンツも表示順位を下げる要因となります)
つまり、オリジナリティのある記事を投稿せよ、ということなのです。

加えて、私の「独自な」見解を記します。これまでGoogleの検索エンジンは網羅性のある記事を評価してきました。何かの「原因」を網羅したり、完全版としての用語集を掲載することなども該当します。
ところが──、生成AIが得意とするアウトプットが「網羅」なのです。そのため、生成AIに頼った記事を検知して順位を下げることに検索エンジンが取り組み続けるなら、「網羅性のある記事」の相対的評価も下がっていくことが予想されます。
この意味からも、他のウェブサイトにはない記事投稿を心がけていくことが、2024年的SEO対策となるのではないかと考えているのです。

弓削徹

弓削徹(専任教授)

  • 専任教授(実務家教員)
  • 株式会社エスト・コミュニケーションズ 代表取締役
  • 株式会社日本アドレイズ監査役
  • 株式会社大坂屋 取締役
  • 復興庁 有識者会議委員
  • 中小機構 中小企業アドバイザー
         震災復興支援アドバイザー
  • 製造業のマーケティングコンサルタント

  • 日本マーケティング学会会員

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