Operational transformation
製造業における収益獲得では、円滑な量産の立上げから、顧客の要求を満たす品質の製品供給までを、無駄なく安定的に運営することが求められます。
これを実現する為の要素を知り関連性を理解して、実行できる能力の修得を計ります。
中小企業・小規模な製造事業を念頭に、オペレーション管理を体系的に理解し、周囲の者に説明できる知識とすると共に、その知識を他分野へ展開適用できる能力の修得を目的とします。
下記4項目の状態を目標とします。
・製造におけるオペレーションの設計、実装、運営を体系的に理解している
・体系的に理解したオペレーション管理の知識を関係者に平易な言葉で説明できる
・関係者と協力して無駄なく安定した生産体制の構築運営を構想できる
・他分野における経営課題へもオペレーション管理の知識を応用できる
中小企業・小規模な製造事業において、経営管理を担うことを目指す院生
※別記の「企業の力」(開発力x供給力x販売力x経営管理力)を参照願います
(本科目は「3コース共通科目」です。コースを問わず、積極的に受講してください。)
予習:「中小企業白書」の要点を把握し、文脈を捉えておく
復習:中小企業が置かれている事業環境の問題・課題全般、及び将来展開についてまとめる
中小製造業の現況を俯瞰します。
昨今の製造業では、19世紀に米国において始まった大量生産指向から、需要の成熟化や多様化や商品サイクルの短命化に起因する、多品種少量生産への転換が進んでいます。中小製造業こそ経済環境の変化を捉えて柔軟に適合していく必要がある一方、他方では、事業を強化するチャンスとも考えられます。日本の中小製造業のオペレーションに関わる現状を中小企業白書等から概観し、受講者各人の置かれている環境を確認・共有します。
有
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長期、中期の「自社、自部門の環境変化」を書き出す
予習:「SWOT分析」を中心に、ビジネスフレームワークの手法と用途の概要を把握しておく
復習:中小企業のオペレーションの問題・課題全般についてまとめる
中小製造業の機会と脅威・強みと弱みを整理します。
事業概観・相関図、ビジネスモデルキャンバス、PEST分析をベースに、SWOT分析、クロスSWOT分析等のフレームワークを用いて、サンプル事例における自社・事業の立ち位置を再確認し、今後の方向性について受講者と共に考え、これからの「中小製造業のオペレーションのあるべき姿」を討議します。
・受注に基づく製造から、計画に基づいた能動的な事業スタイルへの転換
・事業効率視点からのオペレーション見直し
・技能本位の製造から、再現可能な技術への進展
・デジタル技術を活用した生産性の向上
・少子高齢化/労働人口減少、国際化、デジタル化(DX)
・技術の継承
有
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予習:初期流動管理の目的と効能、実践のポイントを洗い出しておく
復習:初期流動管理における予防保全の管理手法としての有効性をまとめ、応用機会を考察する
開発・設計から、生産技術における工程設計、手順書作成を経て製造までの流れ・役割分担を概観した上で、初期流動管理の効能・留意点を確認します。
初期流動管理とは何か、その目的やメリットや管理項目の考え方、対象期間の目安について再確認します。それをベースに、品質問題の未然防止のための生産準備に関する業務ステップを概観し、QCD目標を達成し安定流動を確認して、初期流動管理を解除するまでの、生産開始・立上後の確認までの各ステップにおける留意点を確認します。
予習:初期流動管理の代表的な手法を洗い出しておく
復習:初期流動管理の手法と用途をまとめ、応用機会を考察する
初期流動管理の手法を理解し、活用できるように整理します。
初期流動管理における図面検討(デザインレビュー)、工程計画、テスト流動・品質確認の各ステップでの検討項目を再確認します。また、マトリックスデータ解析法、工程能力指数等の代表的な管理手法や、 PQCDSMEの視点、FMEA技法についても概観します。これらは効果的である一方、負荷の大きな手法が多いことから、どのようなケースで役に立つように活用できるか、受講生の企業、事業(仮想でも可)における、それぞれの手法の適用応用方法について議論します。
予習:プロセス設計、それを実現する方法としての設備投資について概観を把握しておく
復習:生産方式毎のPros&Consを整理して適用の判断要素をまとめる、他分野への応用機会を考察する
【ライン化・設備投資】
生産準備においては、量産工場での製造工程、動線検討・作業員配置等の一連化を行います。組立業を例に生産方式の種類(ライン生産方式・セル生産方式)と、その適性について確認します。
リソースの一連化に基づき生産設備を用意します。設備投資について、経営へのインパクト・意味合いや重要性を、中小企業白書当を参照して概観します。また、設備投資の主な流れや妥当性の判断方法を再確認し、設備投資後に求められる減損会計の進め方や、設備投資に関する補助金・助成金についても紹介します。併せて、中小企業における事例を参照し、設備投資の成功要因を討議・考察します。(NPV、サンクコスト、キャッシュフローと損益の違い等を再確認します)
有
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予習:現場改善について代表的な手法の概要を把握しておく
復習:現場改善手法の間接業務や製造業以外への展開機会と適用手順を考察する
【現場改善】
量産開始後には時を置かず、生産性向上を図るための改善に着手するのが定石です。根本原因分析(「RCA」:Root Cause Analysis)や、「人時生産性」、「ムダ取り改善」等について概観し、各々の活用シーンや改善の進め方について課題を想定して討議を行います。(サンプル事例に対して先ず自分でやってみて、「なぜなぜ分析」のサンプル回答例と比較します)
有
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予習:受講者が関与する事業のサプライチェーンを把握しておく(仮想でも可)
復習:製造の視点から諸外国の特徴を評価し、予習で把握したサプライチェーンにどの様に組み込むかをまとめる
【サプライチェーンの構築】
サプライチェーンとは何かを、製品が製造されて販売されるまでのフロー全体を捉える重要性から再確認します。(製造工程ライン化の理解をベースに、自社内工程だけでなく協力会社などの他社を跨いだモノの流れとして)このとき、サプライチェーンと類似する概念であるバリューチェーンやエンジニアリングチェーンとの対比を通して経営管理のベースとしての双方への理解をより明確にします。
組立製造業の事例を参照しながら、生産活動を行う事業インフラ構築の視点から、サプライチェーンをどの様に設計し実装するかを5層のフレームワークを用いて整理し、理解を深めます。また、海外の取引先との連携について、昨今の地政学リスクも勘案して考察します。
有
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予習:需給調整計画、生産計画について概要と関係性を把握しておく
復習:最適な計画の策定と、その実施に必要な要点をまとめる
【サプライチェーンの管理】
経営管理手法としてのサプライチェーンマネジメントについて、①製造リードタイムの削減、②適切な在庫管理の実現、 ③売上の向上の3つの観点から事例を参照しながら考察し、受講者各々の自社での活用場面や適用方法を討議します。また、需給調整において必須の能力を再確認します。
予習:生産計画と調達計画等の製造に関わる典型的な計画について概要と関係性を把握しておく
復習:戦略購買の意義と効能、実現する為の要点をまとめる
【購買】
購買は企業の利益に直結する重要な業務であることを確認した上で、購買業務の基本的な流れ、購買部門の役割・購買の多岐にわたる業務構成を概観し、購買業務の典型的な問題・課題とその解決方法ついて概観します。また、購買戦略が重要度を増している時代背景を確認し、戦略購買への変革の道筋を考察します。(原価と売買価格の関係、コスト見積もり方法、取引先コストダウンの失敗例)
有
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予習:受講者が関与する事業の調達・購買事情を把握しておく(仮想でも可)
復習:調達・購買戦略のポイント、製造の視点からのBCP案をまとめる
【仕入先マネジメント】
仕入先の重要性を再確認した上で、仕入先の管理方法(与信管理とその定期的な見直し)、加えて、仕入先との上手な付き合い方の留意点や注意点について概観します。また、地政学リスクが継続することを前提に、⾜元の対応のみならず、サプライチェーン全体を俯瞰して多⾯的なリスク対応を含めた中⻑期的な調達・購買戦略を討議し、また、実践的な仕入先マネジメントのポイントを再確認します(取引先評価におけるオペレーションの能力評価(設備、人、運営実態等)の注意点、簿価/時価/発揮能力を峻別する視点、これらのために購買管理部門の担当者の持つべき資質、現場視察やインタビュー時の質問を設定するポイント)
有
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予習:品質管理の手法やプロセス改善に関する取組み姿勢を考えておく
復習:品質管理の手法を間接業務や製造事業以外へ適用する機会と進め方をまとめる
【品質管理・保証①】
大きく変化してきている日本のモノづくりにおける環境においても、「高品質」というブランドは、現在も最大の強味と思われます。品質に関して、基本を遵守し顧客満足を獲得して、維持と改善を図りながら企業の体質改善を図る取り組みの強化が重要です。
品質管理とは、工程の中でつくり込まれた品質が確かなものであることを検査で検証し保証することです。この品質管理は、3つの取組み(1.工程管理、2.品質検査、3.品質改善)を通じて運用されます。品質管理と品質保証の違い、工程検査と出荷検査の違いを再確認します。また、狙いの品質と出来栄えの品質、不良の意味(クレーム、不具合等々との違い)から検査の機能を考え、作業標準・検査標準を、どのレベルまで作れば良いのかを討議します。
有
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予習:QC活動とQC手法に関するに関する基礎を把握しておく
復習:品質管理の手法を間接業務や製造事業以外へ適用する機会と進め方をまとめる
【品質管理・保証②】
QC(品質管理)とは何か、またQC活動とQC手法に関する理解を再確認した上で、QC的な問題解決アプローチ「QCストーリー」による論理的・統計的な改善による問題解決ステップとポイントを事例を用いて解説します。また、「QC7つ道具」(チェックシート、特性要因図、散布図、グラフ、パレート図、ヒストグラム、管理図)の作成方法と使い方を概観し、適用する機会を討議により考察します。
【品質情報を活かした顧客交渉】
不具合データから技術開発のニーズを掴めると考える、逆転の発送があります。「狩野モデル」により分類される5種類の顧客要求品質(当たり前の品質、魅力的品質、一元的品質、無関心品質、逆評価品質)を概観すると共に、顧客が求める品質とその証跡となる品質データを提供することにより、もしくは品質クレームをビジネスチャンスと捉えて問題解決を図ることにより、顧客満足を向上し収益を維持拡大する「攻めの品質管理」について、適用の可能性を考察し、実現する為の条件・課題を討議します。
予習:需給調整、調達との関係等を含めて、生産計画の基礎について再確認しておく
復習:中小企業・小規模事業における生産管理手法の適用機会と進め方をまとめる
【生産管理とは】
生産管理の目的は、売れるスピードに、つくるスピードを追随させる生産計画の策定(生産体制の準備)と、それを実行する生産能力の準備と資材の調達です。生産管理の構成機能について層別して、それぞれの連携の構造(タイミング、サイクル、オペレーション)を概観します。併せて、計画を策定し実行する職場の体制づくりの進め方とポイントを討議により考察します。
【生産管理の手法】
生産管理は、5つのプロセス(生産計画・受注 →所要量計算→ 能力計画 → 製造指図 →製造実績)で構成されます。業種別の生産形態(プロセス)、生産方式を再確認した上で、生産計画の作成に必要な4つの要素(品目、BOM・部品表・配合表、作業区分、作業手順)、及びそれらの関係を整理します。また、製造現場では、製品に関する変化や環境・リソースの変化等、常に様々な変化が起きています。生産を正常な状態に維持管理するためには、この「変化」を事前に予測して、生産に影響を与えないように管理することが有効です。生産活動における変化を適切に把握し補正して、正常な状態を維持する際の着眼点と進め方について事例を交えて概観します。(5M3H:5Mと「初めて、変更、久し振り」のマトリックス)
予習:生産管理に関連するシステムの典型的な機能を列記し役割分担を把握しておく
復習:中小企業・小規模事業における生産管理システムを活動する機会と進め方をまとめる
【生産管理システム(PPC)】
製造現場では、納期・在庫・工程・原価など、さまざまな困りごとが生じます。これらの解決手段として「生産管理システム」があり、業務効率化、生産性向上に加えて、働き方改革の観点からも注目されています。生産管理システムの基本機能を一覧し、ニーズに合わせた生産管理システムを導入することで、どのような課題を、どのような方法で解決できるのかをQCDの観点から整理し(納期管理/在庫管理/工程管理/原価管理)、導入の際の留意点を含めて概観します。また、生産管理システムの導入事例を参照して、中小企業・小規模事業において活用するメリットと導入のハードルとを討議により考察します。
【製造実行管理システム(MES)】
多品種少量生産が主流となる中、製造工程の進捗可視化や属人化している維持運営の解消が急務と考えられています。生産管理に、製造プロセスを可視化するシステム「MES」を活用することで、製造の進捗状況を把握できると同時に、これまで特定の社員が保有していた技能を社内全体で共有して、「ヒト」「モノ」「時間」といった経営資源を無駄なく活用し、生産性の向上に繋げることが可能となります。「MES」の概要と機能やメリット、また生産管理システムや「ERP」との連携について解説します。
「PPC」(Production Planning and Control System):生産管理システム
「MES」(Manufacturing Execution System):製造実行システム
「ERP」(Enterprise Resource Planning):基幹業務システム
予習:原価の意義と用途を把握しておく
復習:工程設計、設備投資、生産計画等の役割を再確認し、原価管理との関連性をまとめる
【BOM(Bill Of Materials:構成部品表・配合表)】
生産管理や購買管理、原価管理を行う上で、部品管理は重要です。BOMは、効率的な部品管理を目的とする一方で、設計段階の情報を購買や製造、更にはアフターサービス部門等へ正確に伝える道具として用いられます。BOMの目的と、部門の用途に沿った運用を概観し、生産に関わる技術・技能を体系的に把握します。併せて、BOM運用の課題を事例を参照しながら考察します。
【原価管理】
原価とは製品をつくったり、サービスを提供するために必要な原材料費や設備償却費、労務費、光熱費などの総額です。ムダなお金を使わず、適切な原価管理をするためには、まず原価とはどのようなもので、どのように捉えれば良いのかを理解する必要があります。
経営の意思決定や財務諸表の作成、予算作成と管理、製品価格の企画と決定の基礎となる原価情報を提供する原価計算の目的を再確認した上で、財務会計と管理会計との違い、原価の種類と見分け方のポイント、原価管理の基礎となる情報を正しく提供する為の原価計算の種類と計算方法を概観します。期間会計とオペレーションサイクルの干渉から、オペレーションサイクルに合わせた原価計算の必要性を再確認します。また、サンプル事例を参照して、原価計算の課題とその対応を討議します。
有
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一方的な講義とせず、短時間の基本情報インプットに基づいて、質疑応答から双方向の対話、更にはグループ討議を通じて、考察を重視する授業展開とします。
毎回、参照資料を配布します。(講義構成や参照事例の概要、討議するテーマ等を記載したもの)
適宜、紹介します。
授業への参画姿勢
20 %
発言の積極性(発言の回数)と、充実した事前準備による理解に裏打ちされた発言の内容(質・妥当性)を勘案します
授業への貢献
30 %
下記の観点から、討議の活性化や内容を深めたかを勘案します ・理論や手法などの基本知識を応用して論旨を展開したか ・自身の実務経験等を盛り込み、現実的な討議としたか ・他の受講生へ発想の転換を促す刺激となる洞察を提示したか ・平易な言葉で、真意や本質を伝えたか
提出課題からの理解度評価
50 %
下記の観点から課題テーマの理解度を推し量ります ・抜け漏れなく、脈絡を保って記述しているか ・ポイントを明示し、その理由を含めて記述しているか ・実際に再現運用が出来るレベルまでの理解を平易な記述で示しているか
企業の力は、「開発力」、「供給力」、「販売力」、そして「経営管理力」で構成されると考えています。以前は、これら4つの力が”足し算”で効力を発揮し、業績に繋がっていました。しかし、近年は”掛け算”に変わったように思われます。どれかひとつの力が弱いと、企業の業績にネガティブな影響を及ぼすことになっているのではないでしょうか。「経営管理力」により企業の力が減衰しない為の備えとして、オペレーション変革を捉えて理解を深め、更には幅広い分野への展開応用を考える機会にしたいと考えています。
(本科目は「3コース共通科目」です。コースを問わず、積極的に受講してください。)