Value Creation and Innovation ‐MOT perspective-
イノベーションは単なる研究開発活動による技術革新ではなく、実社会への新たな価値創造を意味する。本科目はイノベーションの特性(その本質、イノベーションに関わるモデル・理論など)から、イノベーションマネジメントにおける様々な局面での必須の基礎知識を学ぶ。さらに、「価値創造(Value Creation)」に加え、「価値獲得(Value Capture)」の2つのVCの重要性が高まる現在、変化が激しいVUCA*の時代において、独自性を確保し持続するためのマネジメントの重要性も理解する。また、半導体エレクトロニクス産業などの先端産業の実例を掲げ、イノベーションにおけるビジネスモデルの変化を論ずる。「実工学」の世界観のなかDX時代における、価値創造および価値獲得とそのためのイノベーションマネジメントは重要な科目である。
*VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)テクノロジーの進化により、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況にあることを総じての呼称。
イノベーションとは、「もの」や「力」がこれまでとは異なる形の結合(新結合) により生ずるとされる。従来の事業実績を踏襲し経営計画を考える「経路依存的思考」は不確実なVUCAの時代においては成り立たず、まさにイノベーションと価値創造の時代といえる。本科目では、古典的なイノベータ理論から最新の議論までを包含、またISO56002(Innovation Management)の内容も参考にし、かつ価値の概念的理解を具現化する。また,外部からゲスト講師を招き,実践的内容により理解を深める.技術経営の重要な項目の1つである「イノベーションによる価値創造」について多面的に理解し、自身の考え・アイデアを起点に組織を巻き込みイノベーションを実現できるようになることを目的とする。ここでは、ChatGPTに代表される生成AIのイノベーション創出に向けた活用についても言及する。
イノベーションという概念、理論やモデルを説明でき、企業競争力に影響を与えるイノベーションにより課題解決に導く一連の流れとそれに伴う価値創造の意義を説明できる。さらに、自社の技術・イノベーションのアイデアを発想から、事業による価値創造の構想を立案できるようになる。
技術とイノベーションによる価値創造を理解したい院生。自組織内や新たな起業に向けて技術・イノベーションでのプロダクトや新事業を創出することを目指す院生。
(予習)事前配布の講義資料をもとに、技術経営とイノベーションによる価値創造の概要について理解しておく
(復習)特に、価値創造と価値獲得について復習し、さらに代表的なイノベーション理論とそのモデルについて、理解できなかった点を纏めておく
基礎論(1)
1)技術経営とイノベーションによる価値創造
2)企業における戦略系統図とイノベーション
3)価値の定義:技術と顧客の求める価値(古典)
4)価値創造と価値獲得
5)ものつくりとコトつくり:マーケッティング手法
6)イノベーションの定義
7)代表的なイノベーション理論とモデル
(予習)事前配布の講義資料をもとに、DXの定義から同時代でのイノベーションによる価値創造の概要について理解しておく
(復習)特に、データ駆動のDX時代における価値創造に向けての考え方を復習し、理解できなかった点を纏めておく
基礎論(2)
8)DX(Digital Transformation)の定義
9)DX時代:データ駆動とGame Changer
10)経路依存からの脱却と3x3マトリックス
11)価値創造に向けたイノベーション思考法
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、コーポレートガバナンス・コードと知的財産の概要について理解しておく
(復習)特に、メタ情報・特許識別子を活用したイノベーション発想法を復習し、理解できなかった点を纏めておく
知的財産戦略論
1)コーポレートガバナンス・コード改訂と知的財産
2)知的財産戦略
3)特許識別子からの戦略論とイノベーション発想
(予習)事前配布の講義資料をもとに、イノベーション思考法、外部機関データの有効な活用法の概要について理解しておく
(復習)米国VCに関わる実データからのイノベーション思考法を復習し、理解できなかった点を纏めておく
価値創造に向けたイノベーションの思考法(1)
1)デザイン思考とアート思考
2)ハイプサイクルの活用
3)米国VC投資等の複数のデータ活用
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、イノベーション思考法を履修者自身で纏めておく
(復習)実際の演習から得た基礎知識を確認し、理解できなかった点を纏めておく
価値創造に向けたイノベーションの思考法(2)
4)思考法を用いた演習
(予習)事前配布の講義資料をもとに、イノベーションマネジメントの代表例を理解しておく
(復習)古典から最新までのイノベーションマネジメントのあり方を確認し、理解できなかった点を纏めておく
イノベーションマネジメント(1)
1)3つのポイント
2)イノベーションマネジメントのフレームワーク
3)イノベーションのVirtuous Cycle(Porter)
4)最新のイノベーションマネジメント
有
個別フィードバック
(予習)第6回に続き、イノベーションマネジメントの代表例を理解しておく
(復習)イノベーションマネジメントの全容を復習し、特にJob理論を履修者自身の立場で体系化する
イノベーションマネジメント(2)
4)代表的研究者の事例
5)不確実性レベルの理解(Pearson)
6)Innovator'sジレンマ、Capitalist'sジレンマ、Job理論(Christensen)
有
個別フィードバック
(予習)これまでの知識としての「イノベーションマネジメント」について、米国と日本との差異を理解しておく
(復習)特にオープン、クローズイノベーションの差異を復習し、その時間的な変化を理解する
米国シリコンバレーでのイノベーション事例
1)シリコンバレー形成の過程とエコシステム
2)イノベーションマネジメントの日米の視点差異
3)オープンイノベーションの変化
(予習)講義資料をもとに、日本のイノベーション事例を理解しておく
(復習)特に、地政学リスクとイノベーションマネジメントに関し復習し、理解できなかった点を纏めておく
日本でのイノベーション事例(1)
1)日本の有する課題
2)イノベーションを生み出す企業の特徴
3)イノベーションに関わる名言
4)統合イノベーション戦略
5)地政学リスクとイノベーションマネジメント:特許非公開制度
有
個別フィードバック
(予習)日本でのイノベーション事例を理解し、履修者各位の考え方をまとめ、ディスカッションに備える
(復習)Caseとディスカッションをもとに履修者自身の考え方を再構築する
日本でのイノベーション事例(2)
6)Caseとディスカッション
有
個別フィードバック
(予習)イノベーションマネジメント・システムを定義するISO56002の概要を理解しておく
(復習)ISO56002で得られた知識を復習し、理解できなかった点を纏めておく
イノベーションマネジメントの標準化(1)
1)標準化の目的
2)ISO56002の重要項目
(予習)イノベーションマネジメント・システムISO56002の重要項目を理解しておく
(復習)ISO56002をもとに議論された内容を履修者自身で体系化する
イノベーションマネジメントの標準化(2)
3)標準化項目に関するディスカッション
有
個別フィードバック
(予習)AI・機械学習について、事前配布の講義資料をもとに概要を理解しておく
(復習)AI活用イノベーションのあり方について復習し、理解できなかった点を纏めておく
デジタル・AI活用によるイノベーション(1)
1)AI(人工知能)とML(機械学習:学習+推論)とは何か
2)様々な機械学習とその活用
3)AI活用イノベーションの新しい波
4)AI時代のデータ保護とオープン・クローズ戦略
5)生成AI(ChatGPT)の本質とイノベーション創出の適用性
(予習)AI・機械学習の最新の活用事例について事前に理解しておく
(復習)AI活用イノベーションのディスカッションをもとに履修者自身の考え方をまとめる
デジタル・AI活用によるイノベーション(2)
最新の活用事例に関する演習とディスカッション
有
個別フィードバック
(予習)講義全体を振り返り、理解できなかった点を整理する
(復習)最終課題について考察し、講義の全容を理解する
「価値創造とイノベーション」の結論
全体の総復習とディスカッション
有
個別フィードバック
著書を参考に、独自のパワーポイント資料による講義を行う。質疑応答を交えながら教員と院生が双方向に進行し、個人演習とグループワークでの討議を加えることで理解を深める。適宜、ChatGPT(生成AI)を適用しながら議論を深める。
独自の講義テキストを利用する(講義前に配布する)。
MOT 研究開発マネジメント入門(岡本和也、2020、初版4刷、ISBN-13:978-4254201673)
本講義に関連する参考図書は適宜紹介する。
授業態度、個人演習およびグループワークでの成果内容
60 %
個人演習に加え、グループワークを適宜行う。予習・復習状況、質疑応答など講義およびグループ活動への参画姿勢、グループワーク資料の発表・内容などを総合的に評価する。
提出課題の内容評価
40 %
個人課題として提出されたレポートを評価する。
本講義はいずれのコース院生にも共通となる、事業における「価値」を重視した講義である。文系・理系の素養に問わず、履修者全員が理解できるように講義を進行する。個別演習のほか、ChatGPTを活用したグループワークを適宜行い、教員と院生が常に双方向に会話をしながら進める。また、イノベーションの古典から最新までを網羅することで広範囲な知識獲得を目指す。
院生諸氏とは常に会話をしながら、可能な限りわかりやすい講義に努める。