Research and Development Process for Product and Commercialization
2単位
春学期
水曜日・土曜日
※開講時限は授業カレンダーをご参照ください
技術・イノベーション 基礎段階
事業創造コース コース基本科目
本講義では,機関(企業・組織)における新事業開発(事業創造)に向けて,研究・開発から製品・事業化までの一連のプロセスの本質と理想像を,理論と実学の双方の視点で解説する。製品開発・事業化は製造業を中心とする各機関の生命線となる行為である。製造業(大企業・中小企業)や小売業では製品を販売し売上や利益を得る一方、製品のもつイメージが企業の本質に繋がる。このように、当該プロセスはマーケッティング、コンセプト創成から研究開発、設計、製造、そして販売出荷、保守までを包括的に考える必要がある。また、「実工学」の世界観のなか、DX時代においては早期に事業収益を確保する必要性からも本科目は極めて重要である。
研究・製品・事業開発プロセスのマネジメントは経営戦略に掲げられた意思を効率的,効果的に実現する方法の一つである.特に,多製品群を有し事業部制を取る多くの製造業においては,企業のCoreとなる研究部門と製品に直結するLocalな研究部門との連成が重要となる.ここではまず,時代の変遷に伴う研究発想の転換から,基礎・応用・実用化研究の分類から製品化・事業化までの流れを明確にする.その後,対象となる製品アーキテクチュアの定義を行い,製造業における研究開発・設計手法の実像と理想像を議論する.さらには,研究開発・組織構築論,技術ロードマッピング論,知的財産およびビジネスポートフォリオマネジメント,市場の不確実性(VUCA*)と経営戦略との整合性からなる意思決定論,現場研究者の創造力育成論などにも展開し,価値創造を最大限に高めるための施策を主たる目的とする.本科目では最上位の研究開発に力点を置きながら議論を進めると共に、ChatGPTに代表される「生成AI」の原理と有効活用についても詳述する。
*VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)テクノロジーの進化により、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況にあることを総じての呼称。
価値獲得と価値創造を基軸とする研究・製品・事業化までの開発プロセスの本質を理解し、自ら実践できるようになる。
大企業・中小企業問わず、実際の新製品や新事業の企画および研究開発およびそのマネジメントに携わっている院生、関心のある院生を広く歓迎する。文系・理系は問わない。また、ChatGPT(生成AI)の活用に興味のある院生も歓迎する。
(予習)事前配布の講義資料をもとに、研究・製品・事業開発プロセスの全容について理解をしておく
(復習)研究・製品・事業開発プロセスの全容について復習し、理解できなかった点を纏めておく
研究・製品・事業開発プロセス「入門」
DX時代の研究開発の本質と研究・製品・事業開発プロセスのマネジメントの全容
1)経営戦略に基づく経営層の意思を効率的,効果的に実現する方法論:技術経営におけるレンズ
2)企業のCoreとなる研究開発部門と製品に直結する事業部のLocalな研究部門と連携
3)時代の変遷による発想の転換
4)製品アーキテクチュアの定義
5)基礎研究,応用研究,実用化研究の研究分類から実際の製品化・事業化までの流れ
6)企業モデルに必要な3つの研究開発指針
(予習)事前配布の講義資料をもとに、研究・製品・事業開発プロセスの応用について理解をしておく
(復習)特に、製品ライフサイクル(PLC)と技術の成長曲線について復習し、理解できなかった点を纏めておく
研究・製品・事業開発プロセス「応用」
1)新しい時代の特殊性(AI・IoT・Big Data)とマネジメント:生成AIとその適用性
2)新しい共有価値を創造する研究開発
3)技術のS字成長曲線と製品ライフサイクル(PLC)
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、研究開発マネジメントおよび組織のあり方について理解しておく
(復習)研究・製品・事業開発プロセスにおける組織論について復習し、理解できなかった点を整理する
「手法と組織論」
1)研究・製品・事業開発マネジメントに求められるもの
2)研究開発の5世代性
3)研究開発組織論
4)研究開発組織の運用
5)研究・製品・事業開発マネジメントにおける能力
(予習)事前配布の講義資料をもとに、「技術とその価値」について理解しておく
(復習)「製品アーキテクチャ、技術とその価値」について復習し、理解できなかった点を整理する
「技術開発と研究・開発・事業化戦略」
1)技術とは何か
2)技術と製品アーキテクチュア
3)技術とコモディティ化
4)技術と顧客の求める価値
5)技術戦略のタイプと研究開発戦略との関係性
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、産業別の「研究・開発・事業化戦略」の姿勢について考えを纏めておく
(復習)産業別の「研究・開発・事業化戦略」に関わるディスカッション内容を復習し、理解できなかった点を整理する
「技術開発と研究・開発・事業化戦略」
6)産業別の研究開発戦略とディスカッション
(予習)事前配布の講義資料をもとに、「技術ロードマッピング」の意義について理解しておく
(復習)「技術ロードマッピング」の意義と作成方法について復習し、理解できなかった点を整理する
「技術ロードマッピング」
1)VUCAの時代とは何か
2)様々な予測方法論
3)統計学を用いたやさしい市場予測
4)市場予測からみる技術ロードマッピング・演習
5)技術ロードマップ作成のための情報収集方法
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、適正な「研究開発テーマ策定のあり方」について考えを纏めておく
(復習)収益論理からみる「研究開発テーマの策定方法」について復習し、理解できなかった点を整理する
「研究・製品・事業開発プロセスと具体的計画策定・評価手法」(1)
1)研究開発プロジェクトの着手前に考えること:システム思考法
2)収益論理の構造
3)研究開発の活動分析
4)経営戦略・事業計画からみる研究開発戦略と研究開発テーマの選定
5)研究開発テーマの分類と会計上の留意事項
(予習)事前配布の講義資料をもとに、事業化と研究開発の「生産性」について考えを纏めておく
(復習)産業別の研究開発の生産性について復習し、理解できなかった点を整理する
「研究・製品・事業開発プロセスと具体的計画策定・評価手法」(2)
6)研究開発の生産性とは何か
7)研究開発の生産性向上の施策
8)代表的な研究開発テーマ・評価タイミングと形骸化しない工夫
9)事業化に向けた研究開発企画書のあり方
10)目標に対しての優先順位
11)高付加価値型の研究開発
12)研究開発テーマの進捗管理
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、ポートフォリオの概念と知的財産戦略について考えを纏めておく
(復習)ビジネスポートフォリオおよび知的財産戦略のあり方について復習し、理解できなかった点を整理する
「ポートフォリオマネジメントと知的財産戦略」(1)
1)ビジネスポートフォリオによる業務の見える化
2)ポートフォリオマネジメントの展開
3)事業化までの研究開発マネジメントの効率化
4)知的財産戦略論:特許出願・権利化の意義とその戦略
5)知的財産(特許・意匠) から見る研究開発マネジメント
(予習)第9回に続き、特許権利化の可能性を理解し、履修者にとって適正な知的財産戦略について考えを纏めておく
(復習)特許性についてのCaseを復習し、特許出願に関わる考え方について理解できなかった点を整理する
「ポートフォリオマネジメントと知的財産戦略」(2)
6)知的財産(特許)の新規性・進歩性:実例からのCase演習(この事例は特許権利化できるか)
7)PDCAとOODAループ方法論
8)研究・製品・事業開発プロセスにおけるアライアンスと法務の基礎
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、履修者の視点で様々な「発想法・思考法」についての考えを纏めておく
(復習)帰納法・演繹法・アブダクションの差異について復習し、発想法に関わり理解できなかった点を整理する
「創造力の本質」
1)商品開発におけるブレインストーミング
2)発想と研究開発テーマ化
3)発想の源泉
4)科学的思考法の本質:帰納,演繹,アブダクション
5)発想に対するマネジメントの重要性
6)創造力
7)情報の粘着性
(予習)事前配布の講義資料をもとに、研究開発・製品・事業化プロセスでの人材育成のあり方を纏めておく
(復習)適正な人材育成方法に関わり、理解できなかった点を整理する
「研究・製品・事業開発プロセス」における組織と人材育成
1)研究開発投資:研究開発リソースの動員と最適配置
2)製品ライフサイクル,ビジネスモデルからみる研究開発投資の判断ポイント
3)研究開発とそれを左右するDefectors
4)研究開発組織能力の強化
5)人材育成:動機づけの古典的理論
6)研究開発における動機づけ
有
個別フィードバック
(予習)事前配布の講義資料をもとに、研究・製品・事業開発プロセスにおける会計とファイナンスを理解しておく
(復習)市場サイズの試算から、ファイナンス理論を用いた投資回収に関し復習し、理解できなかった点を纏めておく
「事業化に向けた研究開発ファイナンス」
1)研究開発マネジメントとファイナンス
2)会計
3)ファイナンス(NPVからリアルオプションまで)
4)市場と投資回収予測をもとにした研究開発判断
5)想定市場サイズ(TAM) の試算法
(予習)事前配布の講義資料をもとに、研究・製品・事業開発プロセスにおける倫理について理解しておく
(復習)最適な倫理観とは何かを履修者各位の視点で整理し、理解できなかった点を纏めておく
「技術者・研究開発者・事業経営者の倫理」
1)研究倫理とは何か
2)科学技術の姿と研究開発
3)研究開発マネジメントに求められる研究倫理と技術者倫理
4)研究・製品・事業開発プロセスマネジメントにおける倫理の姿:演習・ディスカッション
有
個別フィードバック
(予習)講義全体を振り返り、理解できなかった点を整理する
(復習)最終課題について考察し、講義の全容を理解する
「研究・製品・事業開発プロセス」の結論
全体の総復習とディスカッション
有
個別フィードバック
著書をベースに、研究・製品・事業開発プロセスに関わる最新の内容を付加したパワーポイント資料による講義を行う。質疑応答を交えながら双方向に進め、個人演習とグループワークでの討議を加えることで理解を深める。数多くの実例を掲げ、共に議論しながら進める。
独自の講義テキストを利用する(講義前に配布する)
MOT 研究開発マネジメント入門(岡本和也、2020、初版4刷、ISBN-13:978-4254201673)
授業態度、個人演習およびグループワークでの成果内容
60 %
個人演習に加え、グループワークを適宜行う。予習・復習状況、質疑応答など講義およびグループ活動への参画姿勢、グループワーク資料の発表・内容などを総合的に評価する。
提出課題の内容評価
40 %
個人課題として提出されたレポートを評価する。
本講義はいずれのコース院生にも共通基盤となる、「事業における一連の流れ」を総括する内容である。文系・理系の素養に問わず、履修者全員が理解できるように講義を進行する。そのために個別演習のほか、グループワークを適宜行い、教員と院生が常に双方向に会話をしながら進める。加えて、ChatGPT(生成AI)の原理とその有効活用についても演習をしながら理解を深める。また、日本だけでなく欧米を主体とする国際的視座での講義を行う。
院生諸氏とは常に会話をしながら、可能な限りわかりやすい講義に努める。