「特定課題研究」は大学院講義で会得した様々な「知識」を自身の「知恵」として醸成する格好の機会である。すなわち、研究計画策定から調査研究を進め、対象をシステム的視座から捉えた抽象的概念を具体的論に落とし込む実践の場である。主として、院生自身が直面する課題を対象とし、共に夢を語りながら大学院固有の学術性をも取り入れた、分かりやすい研究指導を行う。
特定課題研究の全体スケジュールをもとに、2週間に1回程度の個別研究会(ゼミ形式)、4週間に1回程度の研究室院生全体の研究会を実施し、院生同志の議論も加えながら、相互に研究対象の理解を深める。時間軸の概要は下記の通りである。
【Phase1】
10月:研究の入門:研究の進め方および論旨のまとめ方や要旨の書き方を含む基礎論を指導(実務においても役立つ内容)
10月~11月:研究テーマおよび研究計画の策定
直面する現状の課題解決や新事業創成など院生の希望する研究テーマを議論し、選定し、何を(What)どのように(How)進めるかを明確にし、Backcastによる研究計画を策定する
【Phase2】
11月~12月:特定課題研究の実施
研究計画に沿って、研究対象を抽象的概念から全容把握し、さらに具体論に落とし込む。ここでは、経営学のフレームワークを適用し、企業および当該業界の現状、顧客・競合企業の動向、DX、SDGs・ESGに絡む経営環境の変化をも定量化し視覚化する。
【Phase3】
12月~2月:特定課題研究の実施
技術については汎用のデータベースを駆使し、特許情報・非特許情報の双方から現状と将来を極めて簡単なモデルで記述する。かつ、対象を具現化するために最も重要なヒト・組織論についても言及する。
【Phase4】
2月~3月:特定課題研究の実施
これまでの研究成果を確認し、不足事項の追加研究を行い、全体を総括する。所属組織の上長および経営層、起業の場合はベンチャーキャピタル(VC)等、得られた研究成果を実行において、意思決定者の判断可能なレベルに提案を昇華させる。学術研究要素が強いテーマにおいては学会発表等を視野に全体を総括する。
下記のような工夫を考えている。
1.異業種・産官学連携・様々な分野融合による包括的視野での研究
VUCAの時代においては、様々な視野からのアプローチが求められる。
2.汎用ツールの活用による定量化・視覚化
極めて簡易なツールの有効活用による定量化・視覚化により、成果の理解を深める。
3.院生同志での議論の場の提供
教員と研究室院生の個別議論(研究会)に加え、院生同志のディスカッションにより新たな気づきを与える。
特定課題研究を自社および自身の課題解決の機会として、様々な情報をもとに解析し真摯に取り組みたい院生を受け入れたい。文系・理系問わず、教員や様々な院生と共に新しい思考方法やモデルを見出したい方を歓迎する。
本来の専門は電子工学、特に半導体集積エレクトロニクス分野であるが、近年はその産業論及び新事業創成論を主体とし、技術経営に関する広範囲なテーマを研究対象としている。特に、知的財産(特許)情報と非特許情報を巧みに組み合わせた事業戦略論・事業創成論が多い。最近は日本学術振興会研究開発専門委員長としてAI活用システムにも力を入れるともに、その実現に向けた産官学連携のあり方、DX実現に向けた組織論にも興味を有する。
技術経営に関わる研究指導(大企業・中小企業・公的機関と多岐に及ぶ)は30テーマ以上の実績を有し、自社の課題解決や新事業創成を中心とした有用性、学会および論文発表に向けた戦略構築手法論に関わる学術性の双方の研究テーマを有する。最近数年の特定課題研究テーマ(概要のみ)として下記を掲げる。
【有用性テーマ:自社課題解決・事業成長・新事業創成】
1)特殊電鋳技術の医療応用に関する研究
2)絵画造形市場を基軸とする持続的成長に関する研究
3)医療機器製造業の自社のコア技術を活かした新規事業の提案とそのビジネスモデル
4)自社の持続的成長を実現するための新しいDX組織体に関する研究
5)素材業界における自社研究開発の効果的な事業創成に関する研究
6)生体計測技術の事業展開に関する研究
7)鉄鋼業界における顧客の潜在要求探索を活用した商品開発戦略に関する研究
8)穀物を利用した養殖飼料の展開に関する研究
9)廃棄魚類を活用したペット用機能性食品の研究
10)自社の集合知(総合知)を活かした住宅設備制御プラットフォームに関する研究
【学術的テーマ】
1)自社コア技術をベースにした新規放熱材料の研究開発戦略(国際会議発表・学術論文発表)
2)大学シーズとその効率的な商業化に関する研究(国際会議発表・学会発表)
3)地域でのNet Zero Emission(NZE)に向けたグリーン水素利活用に関する研究(学会発表)
4)大学の研究成果と地域共創拠点の形成に関する考察(学会発表・学術論文発表)
研究指導にはできる限り多くの時間を費やしていく。
・産業財産権:特許出願数 173件以上(国内特許116件,外国特許:USP36件、PCT15件、EP6件ほか共願を含む)
・外部発表:学術論文および国際会議・国内学会発表等の総計201件以上(2022年現在、共著含む)
・上梓書籍(教科書として参考使用):MOT 研究開発マネジメント入門(朝倉書店、2020)、Introduction of New R&D Management (Asakura Publishing, to be published, 2023)など