経営戦略の立案・形成は、自社と自社事業を見渡し、事業推進にあたって関係している企業・機関や環境変化を的確に把握することから始まる。そして、この把握・理解に基づいて戦略を立案することになる。
つまり、支援対象の企業の把握・理解の方法を修得することはそれに基づき戦略立案をどのようにしていくかを修得することと一体的に行う必要がある。
経営戦略には全社戦略と個々の事業戦略があるが、中小企業の場合、主要事業は一つであることが多いことから、経営戦略の立案方法について学習するとともに、事業の改革や転換を行う場合の事業分野の検討方法、事業を取り巻く環境変化を把握する視点などについても学習する。
1.経営戦略を策定するための基礎(理論・フレームワーク)についての体系的な修得
2.経営戦略を策定するための的確な分析能力の修得
中堅・中小企業経営に係るコンサルタントを目指す院生。
予習:経営戦略の定義と経営戦略理論の歴史の変遷について整理しておく。
復習:経営戦略理論の歴史の変遷と企業における戦略の位置づけについて整理する。
経営戦略の形成(1)(講義とディスカッション)
・経営戦略とは①
経営戦略の定義と経営戦略理論の歴史と分類について学ぶ。
理論としては、ドラッカー、チャンドラー、アンゾフといった初期の経営学者の理論から現代までの理論を理解し、企業における経営戦略の変遷について学ぶ。
予習:中小企業の特性について整理してくること。
復習:中小企業における経営戦略の現状と経営戦略立案のための全体像について整理する。
経営戦略の形成(2)(講義とディスカッション)
・経営戦略とは②
中小企業における経営戦略の現状と経営戦略立案のための全体像について学ぶ。
演習方法としては、大企業と中小企業を経営者における戦略策定・実行の係わり、外部資源の活用、機能別戦略の側面を事例から比較し、中小企業における戦略の特徴について学ぶ。
有
全体へのフィードバック
予習:経済的目的と社会的目的(CSR)について整理しておく。
復習:ビジョナリー企業のミッションにおける戦略行動基準について整理する。
経営戦略の形成(3)(講義とディスカッション)
・経営戦略の基本①
企業の経営目的とミッションについて学ぶ。
企業の経営目的においては、経済的目的と社会的目的(CSR)について整理する。
演習方法としては、ビジョナリー企業のミッションにおける戦略行動基準の事例を取り上げ、中小企業への浸透方法について学ぶ。
予習:企業のビジネスモデルと事業領域(ドメイン)の定義について整理しておく。
復習:物理的定義と機能的定義からの戦略の違いについて整理する。
経営戦略の形成(4)(講義とワークショップ)
・経営戦略の立案にむけた分析手法の理解①
企業のビジネスモデルと事業領域(ドメイン)の定義、分析、戦略ドメインの確立について学ぶ。演習方法としては、物理的定義と機能的定義の違いについて、事例企業の製品開発の変遷で捉え、戦略的ドメインの確定について理解を深める。
有
全体へのフィードバック
予習: 経営戦略立案に向けたフレームワークを整理してくること。
復習:経営戦略立案に向けたフレームワークの使い方を整理すること。
経営戦略の形成(5)(講義とワークショップ)
・経営戦略の立案にむけた分析手法の理解②
経営戦略の立案にむけた内部環境分析手法について学ぶ。
演習方法としては、フレームワークを用いた内部環境分析(4P分析、VRIO分析、バリューチェーン分析、組織・プロセス分析、財務分析、経営資源分析)を活用し、演習を通して学ぶ。
連続授業なので前回と同じ。
経営戦略の形成(6)(講義とワークショップ)
・経営戦略の立案にむけた分析手法の理解③
経営戦略の立案にむけた外部環境分析手法について学ぶ。
演習方法としては、フレームワークを用いた外部環境分析の活用(PEST分析、3C分析、5Force分析、製品市場マトリックス)の活用方法について演習を通して学ぶ。また統合分析の活用(SWOT分析等)の活用方法について演習を通して学ぶ。
予習:中小企業の成長戦略について想定してくること。
復習:中小企業の成長戦略について整理する。
経営戦略の形成(7)(講義とワークショップ)
・成長戦略の理解①
中小企業が持続的に存続・成長していくための成長戦略について学ぶ。
アンゾフの「成長ベクトル」をもとに企業成長の方向性を示し、その中でも重要な多角化を中小企業の視点で整理する。
連続授業なので前回と同じ。
経営戦略の形成(8)(講義とワークショップ)
・成長戦略の理解②
中小企業が持続的に存続・成長していくための成長戦略について学ぶ。
戦略策定における資源配分について製品ポートフォリオマネジメントで理解する。また中小企業同士の戦略的提携やオープンイノベーション等の新しい成長戦略の展開手法についても学ぶ。演習方法としては、ケースを活用して実施。
予習:競争戦略理論について整理しておく。
復習:経営策定の前提となる業界構造分析、戦略策定のための基本戦略について整理すること。
経営戦略の形成(9)(講義とワークショップ)
・競争戦略の理解①
中小企業が厳しい市場環境の中で競争優位を構築し、存続させていくための競争戦略を学ぶ。理論としては、ポーターの競争戦略をもとに、経営策定の前提となる業界構造分析、戦略策定のための基本戦略について学ぶ。
有
全体へのフィードバック
予習:中小企業のバリューチェーンについて整理しておく。
復習:中小企業でも活用できるコーペティション戦略について整理する。
経営戦略の形成(10)(講義とワークショップ)
・競争戦略の理解②
戦略実行のためのバリューチェーンとはどのようなものかを学ぶ。
バリューチェーンはどのような活動によって構成されているのかについて学び、その活用方法を理解する。また中小企業でも活用できるコーペティション戦略について学び活用するためのルールについて理解する。
予習:技能重視の中小企業が技術視点で活動について整理しておく。
復習:技術分析、製品構成分析、市場・技術マッチ分析などの技術マネジメント手法を整理する。
経営戦略の形成(11)(ワークショップ)
・技術を活かした経営戦略立案①
技術を活かした戦略立案のために、技術分析、製品構成分析、市場・技術マッチ分析などの技術マネジメント手法を理解し、技能重視の中小企業が技術視点で活動することへのアドバイスの大切さを理解する。加えて技術を活かした戦略に関連するプロダクト・プロセスイノベーション、製品アーキテクチャー、魔の川・死の谷・ダーウインの海、イノベーションのジレンマなども説明する。演習方法としては、中小製造業のケースを活用して実施。
有
全体へのフィードバック
連続授業なので前回と同じ。
経営戦略の形成(12)(ワークショップ)
・技術を活かした経営戦略立案②
事例企業を対象に3つの技術マネジメント手法を活用し分析を実施する。技術の専門性がなくとも技術を可視化することが可能なことを理解する。
予習:事例企業を対象に3つの技術マネジメント手法について整理しておく。
復習:中小企業の状況により異なる経営戦略に、技術マネジメント手法について整理しておく。
経営戦略の形成(13)(講義とディスカッション)
・技術を活かした経営戦略立案③
中小企業の状況により異なる経営戦略に、技術マネジメント手法を如何に活用し提案するかを理解し、差別化された提案を行う方法を修得する。
有
全体へのフィードバック
復習:事例企業における戦略策定の流れを整理する。
経営戦略の形成(14)(講義とワークショップ)
・経営戦略の策定①
経営戦略の策定演習を通して戦略策定の理解を深める。
実際の中小企業Nを事例に内部環境、外部環境分析から事業領域定義を行い、戦略をチームに分かれて立案する。
有
全体へのフィードバック
復習:事例企業における戦略策定の改善点を整理する。
経営戦略の形成(15)(講義とディスカッション)
・経営戦略の策定②
経営戦略の策定演習を通して戦略策定の理解を深める。
14回目からの続き。実際の中小企業Nの戦略の策定結果を発表し、講師講評を通じ理解を深める。
有
全体へのフィードバック
予習:今までの講義内容を整理しておく。
復習:技術を活かした経営戦略立案を含め授業全体を振り返り経営フレームワーク全体について整理する。
経営戦略の形成(16)(講義とディスカッション)
・全体まとめ
技術を活かした経営戦略立案を含め授業全体を振り返り、中小企業の制約条件をその特徴を活かして打破する経営フレームワーク全体を俯瞰する。一年間の学び全体のベースを確認する。
講義と演習を組み合わせて行う。
中小製造業N社(金属加工業)のケース(第13~15回も同様)
中小小売流通業F社のケース
中小製造業S社(素材~システム品)のケース
講義は担当教員が作成したオリジナルテキストを使用する。(なお、資料によっては必要に応じOffice365に事前・事後アップする。)
網倉 久永 ・ 新宅 純二郎『経営戦略入門』日経BPマーケティング ISBN: 978-4532134037
授業への参画度(質問への対応、演習での積極的参画・的確な発言・議論の整理の仕方、等々)
50 %
課題レポートの内容と発表する場合はそのプレゼンテーション力等
50 %
戦略形成は企業診断・支援の最初に取り掛かる事であり、最後にまとめることである。その意味で、全体を見渡せるようにしてほしい。
シラバスの講義内容は、一部変更する場合がある。
変更の場合は、各教員の講義初日に改めて説明を行う。