現在、グロービスのコーポレート・メンターシップ・プログラム特別講座で、約20名の学生と私が働いている企業のケースについて議論を開始した。日本以外の出身の学生が大半を占め、全員が社会人経験を持つ多様性に富んだクラスとなっている。「難病」をテーマにしており、多くの学生にとって慣れ親しんだテーマではないが、活発に質問や意見を述べているのが印象的である。
外国人と比較して日本人はあまり質問したり意見を述べたりしないと言われる。その理由として、日本の教育は教えることが大半を占め、考えて意見を述べることが少ないことが指摘されている。ただし、日本人でも活発に質問したり意見を述べたりしている人がいることを勘案すると、「好奇心」と「自信」が鍵だと思っている。
まず「好奇心」があると質問や意見を言いたくなるものである。私はコーチングも行っているが、その際には常に相手に好奇心をもつことを言い聞かせてから開始する。相手に対する固定概念を自分が手放して好奇心をもって接すると、自然に相手に対して投げかける質問が出てくるのである。誰もが仕事・人・学習にも慣れてくると自分の枠の中で自分なりの答えを出してしまいがちである。好奇心をもちながら新しい発見をしてもらいたい。
好奇心をもって質問や意見がでてきても、相手や周りの人を意識して質問ができない場合がある。自分の質問や意見が「間違っている」「くだらない」「目立とうとしている」と認識されることを恐れてしまうのである。ここで「自信」が重要になる。私は「自信」に二段階あると考えている。まず、一段階目は「恐れずに言いたいことを言える」レベルである。今の世の中では正しい答えはないというくらいに割り切って考えることが必要となる。自分が思うよりも、周りの人は質問や意見の評価はしないものである。二段階目は「自分だけではなく周りの人のためになるので言える」レベルである。今質問や意見を言わなければ自分にとって損であり、また自分が知りたいなら他の人も同様で他の人にとっても得になると考えられると、質問や意見を自由に言うことができる。ただし、二段階目では自己成長や学習へ努力していることが前提となり、その前提なしでは一段階目と差がほとんどない。
では、日本工大MOTでの経験を基に日本人の学生を考察したい。まず、社会人大学院に入った時点で「好奇心」は高いと言える。その証拠として、自分のキャリアのために何事も会得しようとしている言動が印象的である。次に「自信」であるが、日々鍛えられていることは間違いない。入学直後よりも卒業に近くになると質問や意見が増えてくるのは、1年間で多くのカリキュラムの学習を通じて一段階目の自信が十分でなくても二段階目に到達しているのであろう。MOTが自信を鍛える場所となっているのである。
私自身も、教えるだけではなく、二つのしこう(思考・試行)ができる内容に主眼を置き、状況や相手に関わらず、自分を出していける人材輩出に貢献していきたい。
次号(No.15)は 浪江教授が執筆予定です。