5月末まで、緊急事態宣言が延長されることが決定された。今年は不要不急の外出を控えるという今までにないゴールデンウイークとなり、仕事でも在宅勤務が広がり、私生活と仕事生活のあり方にも大きな変化が新型コロナウイルスによってもたらされた。日本工大MOTにおいても、今年度の早い時期から開始されたWEB授業が当面継続されることになった。
私自身も、在宅勤務期間がもうすぐ2か月になろうとしている。人事として、働く選択肢を増やすために在宅勤務を導入・推奨してきたが、恥ずかしながら初めて在宅勤務を経験することになった。当たり前のことだが、頭で理解しているのと経験するのは異なる。最も異なったのは、「在宅勤務の方が自分のペースで仕事ができる」という考えが間違っていたことである。WEB会議により、在宅勤務前以上に会議の数が増えたのは想定外であった。オフィスで働いていれば、相手の所に行き、ちょっと話すことで終了したことが、すべての案件で打ち合わせを設定するようになっているのも一因である。気を付けないと、昼食時間がないこともある。とは言っても、在宅勤務においても、予想以上に問題なく業務遂行が可能なことも実感できた。今後、在宅勤務が、新しい働き方として普及していくことは間違いなく、中小企業においても対応可能な体制を整えることが要求される。
では、在宅勤務が働き方改革に結びつくのだろうか?私は、在宅勤務は働き方を変えることができ、より多様な働き方の選択肢を与えることになると確信している。今までは、子育てや長時間労働に焦点が当てられていたが、介護、健康状態、および居住地に課題がある方にもメリットがある。そのためには、自身の経験も考えると、特に上司は以下の点に注意する必要がある。
オフィスにいると「何となく」何が起きており、何が優先課題なのかを知ることが容易である。在宅勤務だと、「何となく」が通じなくなるため、明確に情報を共有する必要がある。そのためには、週に複数回チームでのミーティングが必要で、何が起きているのかを明確に共有する必要がある。
チェックインとは、そのときに感じていることを話して、どのような状況にあるのか、どのような気持ちでいるのかを知るための手法である。在宅勤務の状況は、家族と一緒、自分だけなど個々人で異なるので、抱えている課題がないのかを確認することが重要である。自らは言い出しにくいことでも、上司が問い掛けることにより出てくる可能性は高まる。課題があれば、早い時期に特定し改善することが必要である。
昼食時間も含めて、複数のWEB会議に長時間参加し、その後で自身の作業を行うと、夜遅くまで仕事が継続する時がある。昼食時間および通常勤務時間外には会議を入れないなどの考慮が必要である。オフィス勤務時には遅くまで働いていたとの考え方は捨てて、所定労働時間を守ることにより、働き方改革に結びつくのである。
仕事の遂行プロセスが見えないということで評価基準をどのようにすれば良いのかとの質問を受ける時があるが、個人的には上記の頻繁かつ明確なコミュニケーションがあれば、在宅勤務であろうとプロセスは見ることが可能であろう。上司と部下で評価の際にギャップがないことが重要である。
気づいたことをまとめてみると、在宅勤務であろうとオフィス勤務であろうと注意点は変わらない。言えることは、より肌理細かいコミュニケーションが必要なことである。この機会を通じて「あうんの呼吸」から「明確なコミュニケーション」を実現することが、成果とプロセスの両方に焦点を当てることが可能となり、働き方改革にも結び付くのではないだろうか。
また、在宅勤務とオフィス勤務が混在している場合、今のように多くの人が在宅勤務をしている状況以上に同様なコミュニケーションをする必要がある。やはり対面でのコミュニケーションは、言葉以外で語られている情報やインフォーマルな会話があるため、情報量が多くなる。その点を意識しながらコミュニケーションを行うことが要求される。
最後に、現在のように多くの人が在宅勤務を行いWEB会議でコミュニケーションする状況の場合、どのような勤務体制であっても楽しむことも重要であることを付け加えたい。私も同僚と一緒に、何ができるかを話して試している。皆さんが試して良かったことを是非共有してもらいたい。
次号(No.49)は 五十嵐 博一教授 が執筆予定です。