NIT MOT Letter #101

実践!二拠点生活

  • 五十嵐 博一
  • NEW
  • 2026年02月10日

本学の専任教員になった2019年から、東京と九州の二拠点生活を続けています。東京の会社を辞めて教員になるタイミングで、九州のプロジェクトをパートタイムで支援することになり、しばらくは単身赴任で東京と九州を行き来していたのですが、休暇で単身赴任先を訪れた妻が九州を大変気に入り、「九州に住みたい」と言ってくれたので、東京の自宅を引き払い、九州への移住を決めたのでした。

本学の専任教員になった2019年から、東京と九州の二拠点生活を続けています。東京の会社を辞めて教員になるタイミングで、九州のプロジェクトをパートタイムで支援することになり、しばらくは単身赴任で東京と九州を行き来していたのですが、休暇で単身赴任先を訪れた妻が九州を大変気に入り、「九州に住みたい」と言ってくれたので、東京の自宅を引き払い、九州への移住を決めたのでした。

移住したのはコロナ禍の最中で、授業はすべてオンラインでしたので東京に行く機会は限られていましたが、コロナ後は対面授業が復活し、授業のたびに東京に通う生活となりました。教員の仕事は授業のほかにも諸々の管理業務があり、オンラインでできる仕事もあれば、神田キャンパスに行かないと処理できない仕事もありますので、年間を通して、ほぼ毎週、東京と九州を行ったり来たりしています。

政府は東京への一極集中や地方の過疎化といった問題に対応するため、「二地域居住促進法(広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律)」を定め、地方への人の流れを創出、拡大しようとしています。この法律を所管する国土交通省は、二地域居住によって個人の多様なライフスタイルを実現でき、Well-beingが向上するとしています。東京と九州を行き来する二拠点生活(二拠点居住)を実践することで、私のWell-beingは向上したのかを考えてみます。

私は埼玉県出身で、毎日の都内への通学や通勤に片道2時間くらいかけるのが当たり前の毎日を過ごしていました。1日4時間、週20時間を“痛勤痛学”に費やすことに疑問を感じていたのは私だけではありませんでした。同じような“痛勤痛学”生活を送る友人たちと、「こんな生活を一生続けるなんて考えられない!」と、いつも話していました。その後、地方転勤で職住近接の生活を経験し、東京に戻ってからも職住近接を求めて都内に住むようになりましたが、それでも通勤時間は1時間弱かかっていました。今の九州の職場は自宅から徒歩10分もかからず、“痛勤地獄”とは無縁の生活となりました。

地域によって多少の違いはあるとは思いますが、地方都市はコンパクトシティ化されているところが多く、日常生活に必要な施設や店舗などのほとんどが徒歩圏内にあったりします。これは便利です。休みの日に映画を観ようと思ったら、当日の朝にスマホで映画館の席を予約して、上映開始の20分前に家を出れば余裕で間に合います。人気の映画でも満席になることはありません。東京や埼玉に住んでいたころにくらべると、精神的に余裕のある毎日を送ることができているように感じます。

職住近接や休日の映画館の件は、二拠点生活というよりは地方移住のメリットの話ですので、毎週、東京に通うメリットについても考えてみます。二拠点を行き来する最大のメリットは、それぞれの街のその時々の状況を生で見て体感できるということだと思います。地方に移住して精神的に余裕のある生活を送ることで間違いなくWell-beingは向上するのですが、ひとつの地域だけで完結するのんびりとした生活は、少し単調で物足りなさを感じることもあるでしょう。それ故に、東京のような都会で刺激を受けることにもメリットがあるのです。少し飛躍した話になりますが、最近は副業を認める会社が増えているようです。副業で得た知見を本業にも生かすことができると、副業を前向きに捉えて推奨している会社もあると聞きます。二拠点生活も似たようなところがあります。仕事のためだけに限らず趣味や旅行で自宅から離れた場所を訪れることで、いつもとは違う感覚を味わい、気分をリフレッシュすることができるのです。これが二拠点生活のメリットと言えます。

二拠点生活のデメリットは、移動のための時間とコストです。日々の通勤時間は短いですが、九州と東京を行き来するには、私の場合、飛行機利用なら片道6時間、新幹線利用なら片道8時間かかります。ほぼ毎週1往復ですから、飛行機で往復するなら週12時間、新幹線で往復するなら週16時間を費やすことになります。それでも、埼玉に住んで週20時間を通勤に費やしていたころよりも短い時間ですし、通勤ラッシュの満員電車で立ちっぱなしということはなく、確実に指定席に座って移動できますから、さほどストレスは感じません。移動時間中は読書するもよし、パソコンを開けて仕事をするもよし、ビールを飲むもよし、爆睡するもよしの自由時間です。鉄道オタクの友人には、「東京と博多を新幹線でコンプリートできるなんて羨ましい!」と言われます。

最大のデメリットはやはりコストです。東京と九州の1往復の交通費は、早割料金でも6万円くらいはかかります。年間50往復で300万円。東京で借りているワンルームマンションの家賃は月10万円で年間120万円。交通費と家賃を合わせて年間420万円。この金額は本学の専任教員の年俸を上回っていて赤字です。

結局のところ、私の二拠点生活は、Well-beingは間違いなく向上しているものの、相応の費用を支払って維持しているということになります。つまり、私は地方での暮らしを楽しみながらも都会の刺激を求め、そのために本学の教員を続けているのでした。

五十嵐博一

五十嵐博一(専任教授)

専任教授(実務家教員)

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