NIT MOT Letter #30

物づくりにおける4つの“シンカ”

  • 髙篠 昭夫
  • 2018年10月09日

去る8月25日、「車づくりにおけるイノベーション」と題して第3回SMEセミナーを開催した。その中から一部を紹介したい。

車のモデルチェンジというのは企業経営に影響を及ぼす一大イベントである。また、開発・生産においても、イノベーションの機会として重要な位置づけになっている。商品では、モデルチェンジのサイクルの間に技術革新を進め、「どれだけの新しい価値をお客様にお届けできるか」ということになる。一方、生産部門では新モデルを導入する機会でライン体質を変えるチャンスと捉えている。差別化された商品の開発と新しいプロセスの導入が密接に関係しているのである。

物づくりにおけるイノベーションは図のようなマトリックスで整理できる。商品・部品開発の商品軸と生産技術開発の物づくり軸で示している。Aのゾーンは既存の商品・部品について既存技術を活用して改善を行う、主として生産現場で技術を伸ばす(「伸化」)ゾーンである。それ以外のゾーンがイノベーションの領域である。Bのゾーンは「商品開発連動型」で、新商品を導入するタイミングでそれと連動して既存技術を「進化」させ、新商品を成立させるパターンである。Cのゾーンは「設備開発型」で、既存製品・部品に革新的な造りのプロセスを導入するような開発で、自社の技術の真価を発揮しそれを深める、そのコア技術の真価が問われるゾーンである(「真価・深化」)。生産効率、コスト削減・品質向上などの企業体質の課題に対応するケースが多い。Dのゾーンは「商品・設備連動開発型」で、革新的な商品開発と革新的なプロセスを並行開発して物づくり対応する、ベースのコア技術が新しいものに化けるパターンで(「新化」)ある。資金力と人材・開発力、商品開発と設備開発のマッチングや設備投資に対する投資回収などが常に課題となるイノベーションである。

ニーズに発想・アイデアと技術が加わりイノベーションが生まれるが、技術には生産技術に長けている、あるいは商品開発に長けているなど、自社のコア技術、強みから色々な“シンカ”の方法があることを申し述べておきたい。

次号(No.31)は 水澤 直哉教授 が執筆予定です。

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