今夏の参議院選挙では、与党が議席を大きく減らすという結果となった。政権に対する信任の揺らぎを背景に、「日本人ファースト」や「外国人排斥」といった言説が支持を集める現象が顕在化しつつある。いわゆる「ポピュリズム」である。だがこのような政治的風潮が、果たして本当に日本社会の未来を切り拓くのだろうか。
今夏の参議院選挙では、与党が議席を大きく減らすという結果となった。政権に対する信任の揺らぎを背景に、「日本人ファースト」や「外国人排斥」といった言説が支持を集める現象が顕在化しつつある。いわゆる「ポピュリズム」である。だがこのような政治的風潮が、果たして本当に日本社会の未来を切り拓くのだろうか。
こうした閉鎖性の台頭とは対照的に、私は最近、ある高校生の懸賞論文に心を打たれた。彼女の小論文は、発達障害の子どもたちへの学習支援にICTを活用する方法を提案し、自ら地域の学習支援の現場に足を運び、データを取りながら、解決の道筋を模索していた。そこには、排除ではなく「共に生きる」という態度が、素朴でありながらも、力強く息づいてる。
このような若者の姿勢は、決して例外ではない。多くの学生が、生成AIやICTを使い、弱者支援や地域課題の解決に取り組み、自らの知見をもって社会に働きかけようとしている。そこには、現代の分断社会に対するささやかながらも、確かに拓かれた抵抗の意思が感じられるのではないか。
ポピュリズムとは、歴史的にみれば、しばしば「既得権層」や「外の者」への敵意を通じて、わかりやすい敵を仕立て、問題の複雑さを覆い隠す構造である。それが高じれば、社会根幹を揺るがし、国際的孤立を招く危険性すらある。だがその対極にあるのが、こうした「市井」たちによる「地道な知の積み重ね」である。日常の身近な課題に気づき、それに真摯に向き合い、調べ、行動する。そうした営為こそが、未来社会の可能性を支えてきたのである。
生成AIの登場により、知の生成と表現の在り方も大きく変わろうとしている。しかし、技術がどれほど進歩しても、それを用いるのは人間である。冷静な分析、正確な情報、そして倫理的判断と勇気ある行動があってこそ、知は初めて社会の力となる。今、私たちに求められているのは、排除ではなく「包摂」の思考であり、敵を仕立てるのではなく「問い」を立てる「知性」である。
その意味で、研究という営みは決して無力ではない。むしろそれは、未来への小さな灯であり、希望の道筋を照らす可能性を秘めている。大学院という知の共同体の中でこそ、私たちはその灯を絶やさぬように守り、育て、次世代へと手渡す責任がある。ポピュリズムに抗いながらも冷静に、私たちは知の力で、未来を築いていく覚悟が問われている。いまが正念場である。
おわり
[経営実務]
サンシン電気株式会社 代表取締役社長
三新電気香港有限公司 董事長CEO
株式会社エスシーツー 代表取締役社長
新光和株式会社 代表取締役社長
CEBU SHINKOWA Inc. CEO
新東ホールディングス株式会社 代表取締役社長
[学術研究]
博士(経営学)
日本経営実務研究学会 理事
日本経営監査学会 理事
日本地方公会計学会 理事
一般社団法人ICTマネジメント研究会 理事長
全日本能率連盟2021年度「顕彰牌」受賞
[教育活動]
日本工業大学専門職大学院MOT 専任教授
一般社団法人ICTマネジメント研究会理事長
信州大学 特別講師
ビズアップ総研 講座講師
元・明治大学/マレーシア工科大学 DMP特任講師
元・明海大学非常勤講師 他