本研究科の岡本和也教授が指導した山口大学大学院創成科学研究科博士後期課程のAiza Syamimi binti Abd Raniさんが、博士(学術)の学位を取得されました。
Aizaさんは国立大学法人山口大学大学院創成科学研究科に在籍し(マレーシアからの国費留学生)、岡本教授の指導のもと研究を進めてこられました。なお、岡本教授は本学専任教授として着任後も、前職である山口大学大学院技術経営研究科および大学研究推進機構の客員教授として教育・研究活動を継続されています。
Aizaさんの博士学位論文題目は、“Strategic Innovation in Taekwondo: A Systematic Framework for Business Idea and Design Concept Generation Using Patent-Based Knowledge and Generative AI”(「特許ベース知識と生成AIを活用したビジネスアイデアおよび設計コンセプト創出のための体系的フレームワーク」)です。
本研究は、デジタルトランスフォーメーション(DX)やAI、スマート機器の急速な発展が進むスポーツ産業において、特に人的・資金的リソースが限られるテコンドー関連の社会的企業(Social Enterprises: SEs)を対象とし、特許情報と生成AIを活用した新たなビジネスアイデアおよび製品設計コンセプトの体系的創出手法の構築を目的としています。
近年、スポーツ組織、特にNPOから社会的企業への発展を目指す武道関連団体においては、競争力強化と持続可能な組織運営のためのイノベーション創出が重要な課題となっています。一方で、従来研究の多くは既存システムの機能改善に重点が置かれており、知的財産情報を活用して新たなアイデアや設計コンセプトを体系的に創出・評価する実践的な方法論は十分に確立されていませんでした。
本研究では、競技人口が多く国際的な広がりを有するテコンドー分野を対象として、
1.特許データに内在する技術知識の体系的抽出
2.生成AIと概念距離モデルを活用した客観的なアイデア創出・評価
の実現を目指しました。
具体的には、共通特許分類(CPC)や共起ネットワーク分析を用いて、テコンドー、武道、eスポーツ、ブロックチェーン、IT/IS分野の特許および学術文献動向を分析しました。さらに、Word2Vec(C-BOWモデル)による概念間距離(コサイン類似度)に基づく「Novelty Potential」および競争領域の空白を示す「Void Matrix」を構築するとともに、GPT-4を用いて特許情報から目的−手段(Purpose–Means)ペアを抽出し、「Patent Design Catalogue」を作成しました。
また、これらを生成AIと連携させることにより、「スマート採点・感情駆動プラットフォーム」や「太陽電池駆動IoT・AI動画プラットフォーム」などの新規コンセプトを創出。そのアイデアについては、専門家による新規性・実現可能性・市場性評価に加え、Kruskal–Wallis検定等の検証を実施しました。さらに、マレーシアテコンドー連盟やスポーツ関連企業(SMEs・LEs)への半構造化インタビューを通じて実務的なフィードバックを収集、生成AI単独によるアイデア創出と比較し、ドメイン固有かつ独創的なイノベーション創出の可能性を示しました。また、本研究成果はスポーツ分野における持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献し得ることを明らかにしました。
Aizaさんは博士前期課程から一貫して岡本教授の指導を受け、博士後期課程へ進学後も精力的に研究を推進してきました。
予備審査、本審査および公聴会を経て、2026年9月25日、山口大学の谷澤幸生学長より博士(学術)の学位を授与されました。