NIT MOT Letter #8

書籍】「ケーススタディに学ぶ起業・第二創業」出版のお知らせ

  • 小田 恭市
  • 2016年10月07日

本学大学院技術経営研究科(MOT)では、「ケーススタディで学ぶ起業・第二創業」(出版社:クロスメディア・パブリッシング)を平成28年9月28日に出版しました。

この本は、MOT修了生へ公募しご賛同頂きました、起業に成功している経営者5名、第二創業に挑戦している経営者3名の会社を対象に、自社の経営理念・経営ビジョン、経営戦略・戦術、起業や第二創業への挑戦とリスクへの対応などについてインタビューを行い、その実像をまとめたものです。

私は、本書の取材に立ち合い経営者らの話を聞いたところ、いくつかの共通点が見てとれました。まず、インタビュアーが気持ちよく質問できるよう配慮する「気配り上手」、曖昧で幅広く答えにくい質問に対しても極めて論理的に説明する「語り上手」、語りが熱っぽくエネルギッシュで聞き手側を話に引き付けるような「アピール上手」であったことです。また、それぞれが経営者として確固たる「経営哲学を持っている」、ビジネスの見通しに関して「鋭い先見性を持っている」、経営理念を踏まえた「明確な会社ビジョンを持っている」ことも挙げられます。

取材から一歩離れると、みなともかく、よく飲み・よく食べ・よく遊びの3拍子が揃っているようです。旺盛な行動力を活かして他分野の様々な人々に出会い、価値観を共有、信頼関係を深め、ビジネスのキーパーソンになれるよう人脈形成に努めています。さらに、早朝や深夜などには自分の時間を確保し、自己研鑽にも励む。自己の人間的魅力を高め、人脈形成や経営者としての資質の向上に役立つ努力を続けられています。

本書では、起業者・第二創業者が顧客にとって自社がなくてはならないものとして存在感を高めるまでに成長させた理由を探っています。本書に登場する起業者・第二創業者はビジネスにおいて幾度となく大きな試練(経営危機、自信喪失など)に遭遇した経験を持っています。大きな試練は、彼らをギリギリの極限状態に追い込む。極限状態に追い込まれたとき、彼らは一様に試練から逃げるのではなく、リスクを取って正面から立ち向かうことによって試練を乗り越えています。この試練を乗り越えるプロセスにおいて、彼らは今までの思考とは異なる「経営者の思考回路」を獲得したといえましょう。また、大きな試練を乗り越えようとする時、彼らのもとには、相談に乗ってくれるメンター、精神的支柱になってくれるサポーター、ビジネスに協力してくれるパートナーなどの救世主が現れています。新たなビジネスを創出する場合だけでなく、苦境を乗り越える際に「経営者の人的ネットワーク」が活きています。本書では、「経営者の思考回路」「経営者の人的ネットワーク」を形成している者を「熱き経営者」と呼んでいます。

経営者ならではの「思考回路」

「経営者の思考回路」について、私は経営者が会社の過酷な試練から脱するために、追い詰められた逃げ場のない状況下で、従来では思いつかない最善の対応策を産み出す能力として仮定しています。これによく似た身近な事例といえば、作家が締め切りギリギリになって、やっと成果を産み出す創作力が挙げられるかもしれません。締め切りギリギリにならないと発想できない成果でしょう。こうした創作活動を繰り返すことによって、作家特有の思考回路が形成されると思います。

「経営者の思考回路」も同様、火事場の馬鹿力が生み出すケースが多いものと思います。過酷な試練を経験した者にのみ、「経営者の思考回路」を手に入れることができるのでしょう。言葉を変えると、「経営者として一皮剥ける」という表現がありますが、修羅場を潜り抜けることでしか、「経営者の思考回路」は産まれないと言えます。このような経験を繰り返し、「経営者の思考回路」が頭の中に定着し、経営課題に対して瞬時に解決策が頭に浮かぶ(状況をインプットし、順次にシミュレーションしアウトプットできる)ようになれば、「熱き経営者」に近づいたといえるでしょう。

本書の「熱き経営者」たちは、20代、30代の起業者、事業承継・第二創業者として幾度となく試練を克服する中で「経営者の思考回路」を形成し、定着させ経営者として一皮剥けたものと推察します。

経営者を支援する「経営者の人的ネットワーク(人脈)」

ビジネスにおいては、「何(What)を知っているかよりも誰(Who) を知っているかが重要である」と、人脈の重要性が指摘されています。人脈は、誰にでも形成できるものでなく、他者から関係性を作りたいと思われるような魅力的な人物、価値観を共有でき信頼できる人物でないことには形成できないと思います。人脈は作ろうと思っても簡単にはできないのです。

ではどうすれば人脈を形成することができるか。まずは経営者自身の魅力を高める必要があるでしょう。本書の「熱き経営者」らは、早朝・深夜に自分の時間を確保し自己研鑽していました。会社の事業成長だけでなく、個人的な魅力の向上へのたゆまぬ努力を怠っていません。また、自身の魅力を相手に知ってもらわないことには始まりませんので、様々な集まりに行きオープンマインドを持って積極的に参加し、意見交換を行うことが必要になります。

本書で紹介する「熱き経営者」たちの物語から、経営者としてのマインドや具体的行動、ビジネス創出のアイデアを感じ取っていただき、読者の皆様のビジネス、生き方に何らかの参考を得てもらえれば幸いです。

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次号(No.9)は浪江一公教授が執筆予定です。

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