NIT MOT Letter #29

第5回SMEセミナー開催に寄せて

  • 西尾 好司
  • 2018年09月25日

今回のMOT Letterは、来月10月27日(土)に開催する第5回 “SMEスピリットによる実践セミナー”『中堅・中小企業の魅力を引き出すために~社資源の価値の再発見と新たな活用に向けて~』に合わせて、企画の問題意識をご紹介します。

中堅・中小企業は、これまでは技術力のある企業であれば、特定顧客との関係を中心に、これまでの自社のコアの技術や製品、あるいはサービスをベースに対応できていました。ところが、2010年以降サプライチェーンが大きく変化しているようです。中小企業庁の審議会において、主に自動車業界を中心とした議論がなされました。資料の引用はできないということなので、この審議会の資料があるURLを書いておきます[1]。おそらく、サプライチェーンの変化は、IoTの普及により一層拡大するはずです。このような時代を迎え、中堅・中小企業は、B2BからB2Cへの転換、あるいは、B2CからB2Bへの転換を含め新たな市場・顧客の開拓が求められます。地域レベルの活動をしていた中小企業でも海外市場への展開が増えています。

新たな顧客や市場の開拓のためには、自社が提供できる顧客価値の可能性を高め、自社の強みや魅力を社外に発信していくことが益々重要になっています。確かに、中堅・中小企業には様々な魅力がありますが、必ずしもそれをうまく社外に表現していたとはいえません。発信方法の一つが企業や技術のブランド化です。一般に企業の課題解決は自分だけではできないことが多く、自分だけでしようとすると課題の先送りになりがちになります。本セミナーで取り上げるような、中小企業の持っている、隠れた(企業自身が気づかない)技術的な魅力や企業としての価値を引き出すためには、新たな取り組みが必要になります。そのためには自社の資源を客観的に分析し強みとして構築する力を付けていくことが求められます。自社では当たり前と思っていたことが第三者から見ると魅力となるなど、自社や社員が気づかない強みや魅力を「見える化」するためには、第三者と一緒に取り組む方がうまくいくので、社外の専門家との共創が必要になります。

そこで、10月27日のセミナーでは、中小企業の持っている、隠れた(自社が気づかない)技術的な魅力や企業の価値を引き出すために何をすべきか、そのために社外の専門家をいかに活用していくかを議論することを目的に、デザイン、技術評価、ブランド化などをキーワードにして、企業を支援している3人の専門家からご講演をして頂くことにしました。以下3人を簡単にご紹介します。

ロフトワーク・二本栁友彦氏

最初に、ロフトワーク・二本栁友彦氏から、諏訪市の企業と東京のデザイナーの連携による精密加工技術の魅力を世界に発信する「SUWAデザイン・プロジェクト」、日本特有の商材を持つ中小企業の海外展開を支援するMore Than Project等を牽引された経験から、企業による地域資源や自社技術の発見・活用についてご演頂きます。

「SUWAデザイン・プロジェクト」とは、諏訪市の高い精密加工技術を広く伝えていくことを目的に、諏訪地域の企業と東京のエンジニアやクリエイター、新規事業開発関連の人材との共創を行うプロジェクトです。例として、精密技術を活用したミニ四駆の制作やLightfaceという諏訪市のレンズ専門メーカー・日東光学らが開発した新しい発光LEDパネルの用途開発があります。また、「More Than Project」は、終了したプロジェクトですが、日本にある古くからその地に受け継がれてきた技術や伝統、生活文化を生かした商材をもつ、個性豊かな中小企業の魅力を世界へ発信し、海外での販路開拓や拡大を進めるために、海外に向けた事業計画立案、現地の市場調査、現地ニーズに合わせた商材改良や販路開拓などの専門家と中小企業がタッグを組んで、海外販路開拓を支援するものです。以下にこの2つのプロジェクトのURLを挙げておきます[1]。併せて、ロフトワークさんのWebサイトも是非ご覧ください[2]

[1]

http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/syoukibokihon/2018/180628syoukiboKihon.htm

http://morethanprj.com/

[2] https://loftwork.com/jp/project/20171127_suwackathon

 

太陽国際特許事務所 上條由紀子氏からの講演

次に、弁理士業務、技術系中堅企業社外取締役や専門職大学院教員での実務や研究の幅広い経験をされてきた太陽国際特許事務所・上條由紀子氏から、技術の新たな活用に向けた戦略についてご講演頂きます。

新しい自社資源の魅力を発見するために最初に行うべきは、自社資源(特に技術)の棚卸です。単に特許やノウハウだけでなく、その企業の技術に対する他者の評価やブランド力も棚卸時の評価対象になります。現在を含むこれまでの自社技術が対象になるだけでなく、新しい技術を生み出す力(技術力)もみなければいけません。それは、これからのビジネスをどのように進めるかにも依存します。このように技術の棚卸から、自社技このような、技術の棚卸しを如何に行い、自社技術の新たな活用につなげていくか、あるいは技術のブランド化について取り上げます。

中小企業庁・田上博道氏からの講演

最後に、中小企業庁・田上博道氏から、現在の中小企業政策の課題やポイント、政策担当者からみた中小企業の強み・魅力、支援策の活用事例、新用途開拓事例、中小企業の地域への貢献、についてご講演頂きます。

技術を含めた自社資源を自社の枠内で考えるだけでなく、一端、自社が存在する地域の中から位置づけてみるというやり方があるのではないでしょうか。特に中小企業は、企業の自社資源の価値を考える時に、その企業が立地する地域やそこにある資源とつなげて考えていくことで、新たな価値を導き出せます。地域の力を引き出す中小企業を支援する政策が採られていますが、地域から中小企業が力をもらうことも必要だと思います。

今回のセミナーは、自社資源を社内だけで捉えるのではなく、企業が存在する地域の中でも位置づけて議論できればと思っております。自社技術・資源の新たな活用を考えている企業に是非参加して頂きたいセミナーです。また、金融機関や地方自治体など中小企業を支援している方々にも有意義なセミナーですので、奮ってご参加ください。

次号(No.30)は 髙篠 昭夫教授 が執筆予定です

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