NIT MOT Letter #46

フィードバック分析による自分の強みの理解

  • 清水 弘
  • 2020年03月02日

しばらく前にある企業のCFOの方と話していて超過収益力という言葉を伺った。財務指標に出てこないが持続的な収益力のために重要な無形な資産といった意味のようだ。

良く我々が使う企業の強みという言葉の別な定義のようにも感じられた。強みという言葉はよく使うがあまり堀下げて考えたことがなく少し調べて見た。

そんな時に頼りになるのは、2005年に亡くなった経営学者のピーター・ドラッカーだ。ドラッカーの幾つかの本を読み直してみると、「創造する経営者」には企業の強み、「経営者の条件」にはマネジメントが人事の際に考えるべき個人の強み、「プロフェッショナルの条件」には個人の強みを如何に理解するか、について記載があった。特に個人の強みの理解については、ドラッカーが50年間行ってきた強みを理解する方法の説明があり、自分でも試してみたのでこの場を借りて御紹介したい。

ドラッカーは「プロフェッショナルの条件」の中で、生き生きと働くためには自らが成果を出せるようにマネジメントする必要がある。また何事かを成し遂げるのは強みによってであり、自分の強みを理解することが大切だ、と語っている。そして自分の強みを知る方法はフィードバック分析しかないそうだ(この言い切りがドラッカーの凄いところ)。方法は簡単で、自分が何かすると決めたら何を期待するかを書き留めておき、それをしばらく時間がたってから振り返り、期待と実際の結果を照合する。これによって期待に沿った結果の出た事と出なかった事とが明確になり、どんな強みが活き、また障害になった弱みが分る、ということだ。

これを実際に一昨年の正月から始めてみた。正月に従来からやっている事や新しく始める事を書き留めておいて、次の正月に何が成果につながり何は止まったかの結果を確認するだけだ。書き留めて振り返る時間を持つと、自然に、なぜそんな結果になったかと、どんな事が得意で優先順位を置くのか、また逆に不得手で後回しになる事が何かが分ってくる。また次に似たような事を手掛ける際にはどうすれば良いかも考えるようになる。さらに自分の子供の頃からを振り返り、どうしてこんな強みや弱みを持つようになったのかに思いを巡らす切っ掛けにもなる。

新年の抱負というほど大げさなものではなく、正月にちょっと自分自身の前年と次の一年を考えるちょうど良い機会となっている。皆さんにもお勧めしたい。

清水弘

清水弘(専任教授)

  • 専任教授(実務家教員) 研究科長
  • ビジネスエンジニアリング株式会社 社外取締役
  • アーサー・D・リトル株式会社(ADL)シニアアドバイザー
  • 日本の中堅製造業の監査役や中国の自動車部品企業のCEOアドバイザー
  • 研究・イノベーション学会会員

次号(No.47)は 浪江 一公教授 が執筆予定です。

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