NIT MOT Letter #10

IoT時代の人材育成

  • 三宅 将之
  • 2017年01月04日

あらゆるモノがインターネットと繋がり、指数関数的にデータが増大・多様化するIoT・ビッグデータ時代を迎えています。

この技術環境変化は様々な社会課題解決の足掛かりとなり大きな可能性をもたらすことについて、もはや異論はないでしょう。最新の「情報通信白書」では、2020年時点の経済効果は約33兆円と推定しています。

後継者が育たないという問題に直面している中小企業は多い。熟練者の行動パターンをIoT・ビッグデータで捉え、解析することで、技の可視化と体系化を可能にし、質の高い技術の伝承と後継者育成に寄与することが期待されています。

日本工大MOTでは、昨年12月に特別授業「ものづくり企業にとってのIoTの機会と脅威(清水教授、西尾教授、三宅が担当)」を開講し、多数の院生(修了生を含む)が参加し活発な議論が行われました。

授業の準備をしていて受講生に注目してもらいたいと思ったことの一つは、情報通信審議会資料「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」にあったICT(情報通信)人材の現状と今後に関する考察です。

日本のICT人材は、米国等と比較して質・量ともに不足しているとともに、 ユーザ企業よりもICT企業(システム開発会社)に多く偏在していることが明らかとなっています。グローバルに競争するIoT時代において、今後を展望(~2025年)し、ICT企業中心の「日本型」からユーザ企業中心の「米国型」への転換を図り、最大200万人規模のICT人材の創出と、最大60万人規模の産業間人材移動を実現することが必要との見解を示しています。

(出所)「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」(平成27年諮問第23号)に関する情報通信審議会からの第二次中間答申

今後、IoTの進展により、ユーザ企業によるデータの取扱いが飛躍的に増加し、ネットワークの柔軟な運用(ソフトウェア制御等)やデータ分析、情報セキュリティ対策等のスキルを持つ人材のニーズが高まってくるものと想定しています。IoTの市場拡大によるICT人材の不足に対応し、当該スキルを備えた ICT人材の量的拡大、人材流動化、既存のICT人材のスキル転換等を早期に進めることが課題と結論づけています。

今後の取組の方向性として、IoTの「重点分野」への集中投資によって関連市場の拡大が進むと、100万人近くのICT人材の追加需要の発生が見込まれることから、プログラミング教育やICT関連資格の在り方の検討等を通じ、ICT人材の量的拡大を図るとともに、既存のICT人材についても、IoT時代に求められるスキルへの転換が必要となっています。

IoTの実現とは、金融・製造・小売などすべての業種が情報産業になるということであると経営者がしっかりと認識することが求められています。IoTの新サービス創出支援のための産官学や異業種連携の促進やICT人材の雇用促進制度等を通じた産業間のミスマッチの解消、ユーザ企業を中心としたICT人材の流動化を図っていくことが必要となります。

中小のものづくり企業においても、事業承継という課題解決に向けて、熟練者の暗黙知の可視化とそのデータ解析について主体的に取り組むことの重要性が高まっています。IoT時代において、本質的に人間が担うべき役割機能、及び守るべきものを見極め、次の10年を展望したICTやデータを利活用した事業戦略の立案、並びに「新人材育成計画」の策定が急務となっています。

三宅将之

三宅将之(専任教授)

  • 専任教授(実務家教員) 副研究科長・学務長
  • 日本興業銀行、野村総合研究所主席コンサルタント、ガートナー Senior Executive Partnerなどを経て、2015年4月より本大学院専任教授
  • 日本価値創造ERM学会会長(現)
  • 日本証券アナリスト協会検定会員(現)

次号(No.11)は 清水教授が執筆予定です。

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