NIT MOT Letter #55

危機に直面した今、未来への扉を見出せるか?

  • 三宅 将之
  • 2021年01月06日

新年の干支は「辛丑(かのと・うし)」ですが、辛は植物が枯れて新しい世代が生まれようとする状態、丑は芽が種子の中に生じてまだ伸びることができない状態を指すとのことです。さて、新年は新たな芽吹きの年とできるのでしょうか?

新年あけましておめでとうございます。

昨年は世界中が新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機に直面しました。

罹患し苦しまれている方や、お仕事に大きな影響を受けて悩まれている方は多いかと思います。一方で、届いた年賀状の中には「長時間の通勤から解放された」と喜んでいる友人もいます。

新年の干支は「辛丑(かのと・うし)」ですが、辛は植物が枯れて新しい世代が生まれようとする状態、丑は芽が種子の中に生じてまだ伸びることができない状態を指すとのことです。さて、新年は新たな芽吹きの年とできるのでしょうか?

足元の諸課題への対応で手一杯の方が多い中、長期視点で社会課題に向き合い、テクノロジーの動向を把握すると共に、中堅・中小企業の立場に立ち、その活用・実践により社会課題の解決への貢献を志向して、2年前に発足した「2030年の社会・テクノロジー研究会」は、関係者のご賛同とご協力を得てほぼ毎月開催しており、先日は第20回を数えました。

毎回、報告者(講師)が専門とする領域をテーマにした長期視点での話の後、事業会社の経営幹部、中小企業診断士、金融関係者、大学教員など様々な経験を有しておられる参加者との意見交換を実施しています。一方向の話ではなく、「対話」を重視しており、時間も十分に充てるように配慮しています。

各回とも参加者から積極的な質疑と共に、①中小企業の視点でも理解を深め、企業現場での実務として、如何にテクノロジーを活用し具体的にどのように取り組み貢献すべきか?②新しいテクノロジー活用に相応しい会社組織の形態や運営、役職員の意識改革、そして③環境に配慮した住環境整備など社会全体の課題解決に向けた取り組みについて、「価値創造とリスク」、「テクノロジーと人」、「事業会社と金融」など多面的に本質に迫り、また、「個人と企業、そして社会」の関係性の変化などに関して活発な議論が行われています。

技術的には確立されていたものの、これまでなかなか実施できず活用できなかったデジタル化・オンライン化によるテレワークや遠隔医療、遠隔教育などが、コロナ禍によって外出や集会が制限されたことにより、一気に普及しました。また、ベンチャー企業にとっても、非対面でのオンライン活用による様々な人とのネットワーキングを通じて、バリューチェーンを形成するための賛同者を得る可能性が高まっているとの見方もあります。

本研究会も、昨春以降はコロナ禍への対応のため、従来の神田キャンパスでの “リアル“ 開催から、オンライン開催に切り替えています。結果的に、毎回の研究会参加者数は従来の開催実績と比較して、約2倍近くに増加することとなりました。夕食後の設定を想定し、午後8時スタート、午後9時半に終了すること(約1時間半の研究会)を基本としています。参加者数を見る限り、参加しやすい設定だと感じていただいているように思います。報告者(講師)による前半40分の話の後は、10分の休憩時間を取って、各自ビールなどの飲み物を用意いただき、後半40分間は各参加者の知見を踏まえた様々な角度から活発に質疑・意見交換を通じて、気づきを得ることを楽しんでいただいているようです。

神田キャンパスで “リアル“ 開催していた時には、毎回、研究会終了後に近くのお店に場所を移して懇親会を兼ねて議論を深めるという良さはありました。この点に関してはオンライン開催では期待できないですが、一方で、上述の参加のしやすさに加えて、質問や意見は、チャット機能を活用することにより、円滑に進めることに役立っており、開催後の記録作成の利便性などを享受できることも実体験を通じて再認識しています。

今般のコロナ禍という未曾有の危機に直面した我々が、この危機を乗り越えるために、一企業組織に閉じた活動ではなく、中小企業を含めた業界全体や業界の壁を越えた取り組みの重要性は一段と増しています。また、有効にテクノロジーを活用するためには、長年続けてきた既存の思考法や組織・人材、業務プロセスを見つめ直し、改めるべき点は果敢に変革実践することが求められています。多くの方々が、この「研究会」という場を通じて、様々な業界で活躍する参加者との対話を重ねることにより、気づきを得て、「未来への扉」を見出していただく良い機会となることを期待しています。

 

<参考1:「2030年の社会・テクノロジー研究会」 テーマリスト>

①     サステイナブル経営とSDGs

②     2025年の崖の克服とデジタルトランスフォーメーション

③     ティール組織 ~新しいテクノロジーに相応しい組織・働き方~

④     AI 倫理の現状と論点

⑤     2030年、M&A巧者のみが生き残る

⑥     ロイターの軌跡、そしてもうひとつの奇跡

⑦     先端産業の開発技術者がSDG’sから考えるべきこと

⑧     SDGsとミッション駆動型企業 – Tesla

⑨     持続可能な暮らしとは?これからの水環境を考える

⑩     ブロックチェーン技術について考える

⑪     持続可能な開発目標に取り組むための知識と視点~グロ-バルガバナンスとしてのSDGs~

⑫     デジタル変革時代における価値創造 ~テクノロジーと人・企業・社会~

⑬     2030年の社会にむけての教育 ~大学教育の現場から見えてくるもの~

⑭     信頼でつなぐ超スマート社会(Society 5.0)のサプライチェーン

⑮     地方老舗旅館の価値創造戦略

⑯     コロナ危機後の中国と米中摩擦

⑰     全社的リスクマネジメントが企業のリスク管理機能の強化で果たす5つの役割

⑱     非財務的価値向上による社員の働きがい向上とサステナビリティ経営について

⑲     設計と製造をデジタルでつなぐ~ 原価PDCAの実践~

⑳     ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)から見た日本

 

<参考2:「2030年の社会・テクノロジー研究会」テーマのマッピング>

NIT_MOT_Letter_No.55-2.jpg

 

近日中に、これまで過去20回の研究会の報告要旨を「冊子」としてまとめて刊行する予定です。​​​​​​​

三宅将之

三宅将之(専任教授)

  • 専任教授(実務家教員) 副研究科長・学務長
  • 日本興業銀行、野村総合研究所主席コンサルタント、ガートナー Senior Executive Partnerなどを経て、2015年4月より本大学院専任教授
  • 日本価値創造ERM学会会長(現)
  • 日本証券アナリスト協会検定会員(現)

次回(No.56)は 清水 弘 教授が執筆予定です。

CONTENTS

おすすめコンテンツ

日本工大MOTとは

本大学院の5つの特徴や設立趣旨・目的などを掲載

イベント開催レポート

NIT MOT Letter

実務家教員が専門家の視点で、ちょっと変わった切り口でのTopicsを提供します。