NIT MOT Letter #68

新型コロナウイルスが流行して考える仕事観

  • 小林 克
  • 2022年03月01日

新型コロナウイルスが流行してから、我々の生活も大きく変化した。特に働き方という点では、働く人の意識も大きく変化したのではないだろうか。今回は新型コロナウイルスが流行してからの働く人の意識変化について取り上げる。

 2019年12月に、中国の武漢においてはじめて報告された新型コロナウイルスは、瞬く間に世界中に広がり、早2年以上が経とうとしている。新型コロナウイルスが流行してから、我々の生活も大きく変化した。特に働き方という点では、働く人の意識も大きく変化したのではないだろうか。今回は新型コロナウイルスが流行してからの働く人の意識変化について取り上げる。
 

Bullshit Jobs(ブルシット・ジョブ)とは

 新型コロナウイルスが流行してからは、多くの新しい言葉が我々の生活に定着した。例えば「3密」、「パンデミック」、「クラスター」など。その中で「エッセンシャルワーカー」という言葉も定着するようになった。エッセンシャルワーカーとは、社会インフラ維持に必要不可欠な労働者とされ、新型コロナウイルスが流行している現在においては、その役割がより評価され見直されている。その反面で、エッセンシャルワーカー以外の職種の人の中には、自分の仕事の社会的価値や必要性について考えた人も多いのではないかと思う。

 このような中でスポットが当たった1冊の書籍がある。2018年にアメリカの人類学者のデヴィッド・グレーバーにより出版された書籍「Bullshit Jobs(ブルシット・ジョブ)」である。日本では2020年に日本語翻訳されたものが出版されている。「Bullshit」とは日本語で「クソ」、「jobs」は日本語で「仕事」と訳され、つまり「クソどうでもいい仕事」という意味になる。
この書籍では、ブルシット・ジョブとは消え去ったとしてもなんの影響もないような仕事であり、なによりその仕事に就業している本人が、存在しないほうがましだと感じている仕事と意味づけている。例えば、誰も読まない報告書を1日かけて作成するような仕事は、これにあたる。

 新型コロナウイルスが流行してからは、この消え去ったとしてもなんの影響もないような仕事が、多く露呈したのではないだろうか。
 例えば、私の友人は新型コロナウイルスが流行する前は、中間管理職として週数回会議に出席し、部下から販売データを集め、各部門長に報告する業務を主に行っていた。しかし新型コロナウイルスの流行後は、定例の会議自体がなくなってしまった。すると、販売データなどは各部門長が部下の担当者と直接オンラインでやり取りして済ますようになった。これをきっかけにして、今まで薄々気が付いていた自身の仕事の必要性について深く考えたという。
 またある友人は、新型コロナウイルスが流行する
前は、週5日、毎日オフィスに出社し、残業も含めて日々8時間以上の仕事をしていた。しかし新型コロナウイルス流行後は、週4日自宅でのテレワーク勤務に切り替わった。テレワーク勤務に切り替わると、日々の業務は8時間以上掛かっていた業務は、3時間程度で終わるようになったという。これをきっかけにして、今まで気が付かないふりをしていた多くの無駄な業務が露呈し、そもそも8時間も拘束される仕事の意味を深く考えたという。

 著書の中では、エッセンシャルワーカーはやりがいを感じている人が多いが、賃金が安い現状があると記載されている。我が国では保育職、介護職の方々などが、その典型的な例ではなかろうか。それに対して、高所得のホワイトカラー層の方がやりがいを感じないまま働く傾向が強いとされている。コンサルタントなどはその典型的な一例と記されている。

 

経営コンサルタント業界はどうか?

 筆者は経営コンサルタントとしても仕事をしているが、コンサルタント業界はどうだろうかと考える。業界を鑑みると、やはりブルシット・ジョブは多く存在する。例えば、破綻することは時間の問題と確信しながらも、延命措置として金融機関から金融支援を取り付けるためだけに、経営者の代わりに改善計画を作成するコンサルタントは多く存在すると聞く。

 また限られた資本の中でも、事業機会を捕らえるために、国や都道府県などは各種補助金制度を設けているが、本来の趣旨とは異なり、単なる定期的な設備更新などのために補助金を利用する企業が存在する。そのような企業に対して、採択されるためのテクニックを売りに申請書類を代行で作成し、高額な報酬を受け取るコンサルタントは数多く存在するといわれる。特に新型コロナウイルスが流行した後は莫大な予算が割かれたため、そのニーズは高まっている。そういった仕事は本来の意味から外れているため、無意味な仕事だと感じている人も多いはずである。

 

本当に有意義な仕事をするために

 経済学者のジョン・メイナード・ケインズ は大恐慌のさなかの1930年に「孫の世代の経済的可能性」というエッセイの中で、大変興味深いある予言をした。生産性が高まったことにより「百年後、一日に3時間働けば十分に生きていける社会がやってくるだろう」と予言したのだ。
 1930年に比べて現代は、驚くほど生産技術が進化した。しかし我々の労働時間は大きく変化していない。生産技術が進化したのに関わらず、労働時間に変化がないのであれば、無駄な仕事も増えているのではないかとも考えられる。そのためか現代は一昔前に比べて働くことへの意味を感じづらい時代になったと言われる。新卒学生の就業への意識調査においては、自分の働く意味と社会の求める意味とが重なることを重視する学生が増えてきている。

 新型コロナウイルスの流行においては、改めて自身の仕事の意味を問うた人も多いはずである。この災害が災害という側面だけではなく、どのようにしたら本当に有意義と感じる仕事ができるのかについて、考える機会になることを望む。

小林克

小林克(専任准教授)

専任准教授(実務家教員)

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