NIT MOT Letter #73

企業の競争力の源泉が有形資産から人的資本に

  • 髙篠 昭夫
  • 2022年08月02日

最近読んだ記事に、「アメリカでは、株式時価総額上位500社企業の無形資産価値額が1990年代半ばに有形資産の価値額を上回り、2018年にはその5倍に達した。彼らの競争力の源泉は無形資産であり、それを支える人的資本の質こそが、企業の競争力を左右する時代に入った。」という内容である。

 企業の利益の源泉が工場にある設備などの有形資産から知的財産、人的資産、組織資本、データ、ソフトウェアなどの無形資産に移ってきたということである。この無形資産を生み出すものが人間の知識や創造性であり、これからは今まで以上に人的資本に焦点を当てていくということが求められる。

 確かにこれまでは「重厚長大」の設備で物造りが行われ、求めるものが「軽薄短小」に変容しながらも設備を使っての物造りが社会を成立させて来た。現在、タイやインドネシアといった新興工業経済地域では物づくりが活況を帯びており、我国がたどってきた道を歩んでいる。(1990~2000年の頃、物づくりを海外に移管し、安いものを海外から購入していたUSAの歩んだ道を、我が国を見てみると追いかけているようである)このようなモノづくりをベースにしたこれまでの経済・社会では、我々は画一的であっても定型的な知識をしっかり獲得できれば、キャリアの可能性は開けていた。これからも物造りが社会を成立させていくのであるから、この基本は変らず続くと思われる。

 しかし、先に述べた様に日本がこれから向かおうとする社会では、欧米と同じように今よりも格差が拡大する社会となる可能性が高い。その主な要因の一つは人材に求められ、これまで我々が経験してきた定型的な知識とは異なった能力が求められるような社会になっていくと考えられる。これからの社会では、問題発見・解決能力、抽象的・体系的思考能力、コミュニケーションによる共同作業遂行能力など、つまり人的資本がより強く求められるようになる。これらは受験教育や学校での生活でもある程度は養うことは可能と思われるが、会社・地域での対人関係、人間関係・経験などに依存する度合いが強いことも知られている。MOTの授業、そして10月から取り組む特定課題研究は、これからの社会が必要とするこれらの力の基礎を効果的につけるのに有効な手段ではないかと考える。

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