MOT 働きながら技術経営が学べる1年制大学院 日本工大MOT

【No.42】イノベーションとマーケティング

NIT MOT Letter

No.42 / 平川 淳(専任教授) 

 

日本企業は過去、革新的な新商品を世界に先駆けて創出してきました。

古くはソニーのトランジスタラジオ、ウォークマン、ホンダのCVCエンジン、セイコーのクオーツ時計、任天堂のTVゲーム、シャープの液晶ディスプレイ、カシオのデジタルカメラ、最近ではノーベル賞を取った吉野彰さんのリチウム電池などなど数えればきりがないくらい沢山あります。日本のメーカーは画期的なイノベ―ショナルな新商品を世に出すことで世界を席巻し成長してきました。

また、今ではカメラのついていないスマートホンは考えられませんが、携帯電話にカメラを付けた「カメラ付き携帯電話」も日本が最初です。同じように携帯電話とインターネットを接続したのもiモードが世界で最初です。スマートホンの原型は日本企業が開発したといっても過言ではないのです。ところが携帯電話ではガラパゴス化といわれたように高機能・高性能の携帯電話を作ったにも関わらす、世界的にシェアを獲得することはできませんでした。スマートホンに至っては、現在日本メーカーは富士通、VAIO、シャープが製造はしていますが、世界シェア微々たるものです。スティーブ・ジョブズがスマホのコンセプト考えた時、アップルは自社で生産することはできませんでした。日本の企業は生産する能力はありましたが、スマートホンという斬新なコンセプトが理解できず、アップル、サムソンの後塵を拝することになってしまいました。

 

なぜ、日本企業は先進的な新商品を作ることはできる能力があるのに世界で勝てなくなったのか?それはアメリカの企業に比べてマーケティング力が決定的に弱いからだと思います。「イノベーション」+「マーケティング」=「ビジネス」このビジネスにつなげるマーケティング力が弱いのです。いくらいい新商品を作っても売れなければ商売にならないということです。日本企業はマーケティング力が弱いために、世界の市場で評価されず株価も低迷し、企業価値の時価総額でTOP100に入っているのはトヨタが43位、ソフトバンクが93位という状況です。ほとんどがアメリカ企業です。

昨年の下期、NHKの朝ドラ「まんぷく」の主人公で有名になった日清食品の創業者安藤百福氏。百福氏は1958年それまでにはなかった画期的新商品の即席ラーメン「チキンラーメン」を自宅の倉庫で開発します(アップルのパソコン開発はスティーブ・ジョブズの自宅ガレージでした)。①美味しいこと②簡単であること③安全であること④常温保存⑤安価であることの5つの開発コンセプトを掲げ苦心惨憺の末開発に成功します。「するめにお湯をかけてもイカにはもどらない」と揶揄されながらもくじけることなく開発に邁進し、ついに成功するのです。しかし、当初は全く売れませんでした。百貨店での試食販売、店頭売り、訪問販売、パッケージの変更等、どれもうまくいきません。しかし、それであきらめる百福氏ではありません。そこで目をつけたのが、当時普及しつつあったTVCMです。百福氏は乾坤一擲の勝負に出ます。大々的なTVCMを打ちます。これが大当たり。チキンラーメンは空前の大ヒット商品となるのです。その後厚生省の特殊栄養食品の認定を受け、さらに売り上げを伸ばします。まさに、時代を先駆けた「イノベーション」と「マーケティング」の融合による成功事例です。

実は、日本企業は「世界で最も革新的な企業(グローバルイノベーター)TOP100社」に38社選ばれており、アメリカの35社を押さえて世界一なのです。選出された企業には、NEC、NTT、オリンパス、キャノン、信越化学、ソニー、東芝、トヨタ、日東電工、日立、富士通、ホンダ、パナソニック、三菱電機など5年連続選ばれた企業もあります。日本企業は先進的かつ独創的なイノベーションの創出については、今でも世界の技術をけん引しています。

 

これから、日本企業がグローバル市場においてビジネス展開して成功を収めるには、イノベーショナルな新商品開発だけでなく、マーケティング力を高めていく必要があります。「イノベーション」+「マーケティング」=「ビジネス」イノベーションとマーケティングはビジネスで成功する両輪です。

インターネットやスマートホンが普及した現代は、百福氏の時代とは比較にならないくらいマーケティングツールは多岐にわたっています。これからのビジネスで成功するためには、ものづくりだけでなく、この多様化したマーケティングツールをいかに活用するかにかかっています。スティーブ・ジョブズ、安藤百福氏のような、商品開発とマーケティングの両方ができる起業家が出てくることを期待してやみません。

 

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平川 淳(専任教授)

 

次号(No.43)は 水澤 直哉教授 が執筆予定です。

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