MOT 働きながら技術経営が学べる1年制大学院 日本工大MOT

【No.53】変化はチャンス!ピンチはチャンス!

NIT MOT Letter

No.53 / 平川 淳(専任教授) 

 

1.何故いまチャンスか

 いま世界は新型コロナウィルスの感染拡大により100年に1回の大変革を求められている。日本でも4月の非常事態宣言以降、我々の生活は大きく変わった。自粛要請により企業は在宅勤務、学校、予備校ではオンライン授業が普通になり、飲食、観光業、航空機業界、コンサートなどのイベント業者などは壊滅的なダメージを受けた。一方アマゾンをはじめとする通信販売、ケンタッキーに代表されるテイクアウト、任天堂の室内ゲームなどは急拡大した。GO TO キャンペーンなどで日本経済は少し明るい兆しは見えるものの、依然としてコロナの状況は予断を許さず行く先の不透明感は否めない。

 企業経営で言えば、新型コロナの影響で、今までの製品やサービスが顧客のニーズにあわなくなり、新規参入者にシェアを奪われる。出す新製品が売れない。日本型雇用システムが崩壊する。若者の就職意識が変化し定着率が悪くなる。人の流動性が高まり良い人材が引き抜かれる。開発に不安定要素が高くリスクが大きくなる。など今までの日本型経営ではとうてい対応できない変化が数多く出てきている。この様に新型コロナによる経営環境の変化は経営者にとってどう対応して良いか判らなくなるほどの影響を与えている。

 こんな中、HIS、星野リゾート、和民など壊滅的なダメージを受けた業界の多くの起業家達は声をそろえて「変化はチャンス!ピンチはチャンス!」とアフターコロナをにらんで積極的に成長戦略を打ち出している。彼らは「いま日本経済は戦後最大の転換期を迎えており、今ほど経済の構造転換が必要な時はない。変化の時代はチャンスだ。」といってはばからない。変化の激しい将来が見えない不透明な今、何故積極攻勢に出るのか。それは変化の時代こそ新事業のチャンスだからである。変化が激しい時に、変化を恐れ受け身に回るか、変化をチャンスととらえ攻めに回るか。受け身と、攻めどちらを選択するか。この企業の姿勢が今後の成長を決める。過去大きな環境変化の後には企業間格差は大きく広がり、新興企業が出てくる。リストラ、効率化、人員削減などをやる企業と、新事業による業容拡大、雇用創出、意識改革を行う企業との差が明確に出てきている。

 

2.変化はチャンス

 では何故変化はチャンスか。まず変化と言っても何がどう変化するのか。

(1)変化とは何が変わるのか?チャンスと考える環境変化のポイントは5つある。

まず第一の変化は

①顧客(消費者)のニーズ、価値観が変わる。

 顧客・消費者のニーズ・価値観が大きく変化することにより、既存の製品、サービスがニーズに合わなくなる。結果既存製品・サービスは売れなくなる。顧客のニーズが急激に変化している時は、その変化にすばやく対応した企業が勝つ。それは既存企業よりも異業種からの参入企業、あるいは低シェアの企業の場合が多い。これらの企業は既存の製品にこだわらず新しいニーズにあった製品で参入できるからだ。顧客・消費者のニーズの変化は後発企業の新事業推進にとって大きなチャンスであり、既得権を持つ企業にとっては大きな脅威となる。

②メーカー(供給者)と流通企業間の力関係が変わる。(パワーシフトが起こる。)

 今まで日本は製造業中心の経済発展をしてきた。従って企業間の力関係も製造業の方がサービス業(販売会社)よりも強かった。しかし今ではディスカウントショップ、コンビニ等の量販店が力を付けてきており、メーカーとの力関係は逆転してしまった。量販店はその強大な販売力を背景に商品企画、価格設定まで決定権を持つ。つまりニーズにあった製品を企画、生産できれば成功を収めることができるということである。

③流通が変わる。

 流通が量販店、通販、テレビショッピング、インターネット販売、訪販、等流通チャネルが激変している。流通の変化(宅急便、小型荷物の配送など)、まったく流通チャネルを持たない企業でも市場参入が可能になった。新しいチャネルを通じて新製品を販売することができる。そのうえ販売コストは自前の販売チャネルをもつよりも安上がりである。むしろ既存チャネルを持たずに身軽な方が新しい有効なチャネルを効果的に活用でき有利である。

④技術が変わる。

 言うまでもなくIT,AI核に技術革新は著しい。今後バイオ、新エネルギー環境保護技術など新しい産業を興す可能性のある新技術が数多く生まれる。技術のオープン化とともに新しい形態(一製品について開発、生産、販売をまったく別の企業が担当する等。)の産業が生まれる。従って開発、生産、販売、すべてにおいて独自の特徴を持った企業は新しい産業にて成功することが可能である。

⑤規制が変わる。

 今まで既成企業を保護するためにあった規制については急速に撤廃される。必ず規制緩和は進む。規制緩和、撤廃による新事業の創出は国の方策であり、日本再生の絶対条件であるからだ。既存企業は今まで守られた既得権を失う。自由競争で生き残れる企業のみが残る。規制緩和によって生み出される数多くの新事業においてはすべての企業が同一条件でスタートする。これは新たに進出しようとしている企業にとっては望むところだ。規制緩和による新事業のチャンスは予想できないくらい大きい。

 

(2)なぜ変化はチャンスか
 (1)で述べたように、顧客ニーズ価値観、企業間パワーバランス、流通、技術、規制等が大きく変化する。この様な時代にあっては既存の製品サービス、既存の販売方法、既存の開発・生産方法は変化に対応できない。特に過去の成功体験が大きいほどこの傾向は強い。高シェアの企業ほど変化に対応できない。この様な企業は変化に対応できないだけでなく変化を認めようとさえない。成功体験がじゃまをして新しい変化を認めようとしないのである。

 この様に変化の時代は、既存の企業の強みが必ずしも強みではなくなり、逆に弱みになることさえある。トップ企業は過去の成功体験が足枷となって容易に変化に対応できない。そして過去の環境状況では強みを持たなかった下位の企業や、新規参入企業が独自のコンセプトを創出し、環境の変化をうまくつかみ成功することができる。この様な理由から変化の時代は下位企業、新規参入の企業にとっては新製品開発、新事業参入の大きなチャンスである。

 

3.変化をいかにとらえるか

 変化の時代は、新事業を推進するには最も適した時代だと言うことは明確である。この様な時代には新事業のチャンスが多い。それを纏めていると次の二つになる。

(1)後発組・低シェア組にシェアアップのチャンス。

既存の業界に全く新しい新事業コンセプトで参入する。成長分野への異業種参入が盛んになる。和民が既存店を焼肉店に業界転換するのはこの事例。

(2)世の中にない新しいコンセプトを持ったビジネスが生まれるチャンス。

奈良先端大学院の27歳の起業家が、AIを活用した全く新しいタイプのオンライン教育システム「カメレオン」を開発。2020年4月にプレス発表したと同時に、デルコンピュータ、NTTコミュニケーションが出資、兵庫の浜学園が導入決定し5年後には上場する予定。

「変化の時代には過去は障害になる。」これはGEのCEOジャック・ウェルチの言葉である。ウェルチはGEを率いて16年常に改革を心がけ、大胆な改革を断行した。彼も、経営には経験よりも新しいことにチャレンジする精神と、社内の反対があっても徹底してやる勇気が必要であると言っている。

 

4.伝えたいこと

新型コロナの影響で、世界は不安感・不透明感が強まっているが、こんな時こそ意気消沈せずに、多くの起業家のように変化はチャンスととらえて、アフターコロナの時代を力強く生き抜いてほしいと思います。

 

 

 

平川 淳(専任教授)

 

次号(No.54)は 小田 恭市 教授 が執筆予定です。

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